布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

デ・ラ・ソウル入門

佐藤「さて、今日は文系ヒップホップの元祖、デ・ラ・ソウル(以下デラ)について語ろうと思うんだが」

サトー「いいね。90年代以降の日本の音楽シーンに影響を与えたミュージシャンということであれば、5指は言い過ぎとしてもトップ10には入ると思う。言わずもがなのLBネイション系のみならず、ポップス畑の人もデラ好きは多いよね」

佐「特筆すべきはいわゆるハードコアの人たちも、デラは結構通ってきてるってこと。デラとア・トライブ・コールド・クエストって、日本人にとってはビートルズとかストーンズみたいな感じだよね、ヒップホップの。その後どういう進路に行くのであれ、とりあえずは基礎教養として身につけておくべし、みたいな」

サ「文学で言うと夏目漱石とか森鷗外みたいなもんだね。ま、鷗外に関してはそれほど読まれてない気もするが」

佐「とにかくデラ(とトライブ)がすごいのは、ヒップホップ好きの人だけじゃなくて、ロック/ポップスリスナーにもmustになってるところだよね」

サ「かく言うわれわれも、『せめてデラくらい聴かなきゃ』というある種の義務感に押されて聴いたわけだけど、うん、これみんなが好きなのわかるよね。怖いとか悪いってイメージでヒップホップを敬遠している人に、純粋にヒップホップの音楽的可能性を感じさせたという点では、その功績は計り知れないよ」

佐「じゃあさっそくいってみようか。まずは1stにして傑作中の傑作、『3 Feet High And Rising』から、ポップなアルバムの中でも一番聴きやすいであろうこの曲」


De La Soul - Buddy - YouTube

サ「ああ、いいねぇ、軽快。デラ聴いてて何が一番いいってこの3人の掛け合いだよね。デラは一応2MC1DJなんだけど、DJのメイスもMCやるんだよね。このちょっと育ちの良さげな3人の会話って感じのライムがいいよね」

佐「ヒップホップってさ、やっぱり会話に近いじゃん、単純に。それをすごく素直にやっているというか、楽しげな仲間内の感じがそのままパッケージされてる」

サ「これ、トラックもシンプルでいいよね。シンプルなブレイクビーツと控えめなベースライン。パーカッションとか鍵盤の音色にすごくセンスを感じる」

佐「トラックということでいえば、ヒップホップの面白みはやっぱりサンプリングにあると思うんだけど、次にかける曲はスティーリー・ダンの『peg』を使ってるんだよね」


De La Soul - Eye Know - YouTube

サ「おお、確かに『peg』だ! この使い方がたまらんよね」

佐「ここからスティーリー・ダンを知ったという人は多いんじゃないかな。知ったというかアナログをdigしたっていうか。この曲の影響だと思うけど、ヒップホップDJにはスティーリーダンのアルバムって“ブレイクビーツの玉手箱”って言われてるらしい」

サ「確かにドナルド・フェイゲンは超タイトなドラムが好きだし、実際ドラムの録音には一番こだわっていたらしい。そこに目を付けるセンスね」

佐「他のアルバムからもいっとこうか。これは僕がデラで一番好きな曲なんだけど、曲名の発音がわかんない!」


De La Soul - Shwingalokate - YouTube

サ「『De La Soul Is Dead』は91年発表のセカンドアルバム。1stの育ちの良いお坊ちゃんな感じからかなり二枚目路線に行ったと思うんだけど、この曲も問答無用でかっこいいね」

佐「なんだけどやっぱり品がいい。ビートは相当強力になってるけどね。トラックはなんかもう渋谷系のコラージュみたいな感じだよな、90年代の日本人が好きな音の詰め合わせ。ブラス風のリフも、バックのカッティングギターも、全部どっかで聴いたことがある気がする」

サ「ま、順序的にはこっちが先なんだが。次は96年の『Stakes Is High』からいってみようか」


De La Soul - 4 More - YouTube

佐「モンドというかラウンジというか、その辺の要素が色濃いですね。ホントこれ日本人が好きな音だわ」

サ「この頃って日本では大沢伸一とか全盛期でしょ。ひと通りネタがdigされて、映画のサントラとか古いジャズとか、モンド方面に手を広げていた時代。その感じとリンクするよね」

佐「96年あたりになるとさ、日本のシーンとデラってかなり同期してる」

サ「というか、93年の3rd『Buhloone Mindstate』にはスチャダラパーが参加してるからね。ということでスチャ参加曲じゃないんですが、『Buhloone Mindstate』からも1曲、これはヒップホップ・クラシックと言っても過言ではない名曲ですね」


De La Soul - Breakadawn - YouTube

 佐「1stのパーティー感が鳴りを潜めて、このアルバムはかなりストイックというかタイトだよね。個人的にはトライブに近い感触を覚える」

サ「ロック/ポップスでいうと弾き語りアルバムというか。かなりライムにも磨きがかかってて、ブレイクビーツとライムだけありゃいいやみたいな骨太さがあるね」

佐「この辺がハードコア方面の人からも認められるゆえんじゃないかな。ヒップホップってやっぱりコンペティション、競技に近いからさ、ちゃんとしたスキルがないと土俵に上がれないよね」

サ「ということでデラをざっと流してきたわけですが、日本人がデラ好きなのって、そもそも日本におけるラップの黎明ってのがこの路線なんだよね」

佐「日本で最初のラップは何かってかなり議論になるところなんだけど、いとうせいこうにしても思いっきり文系の人だし、吉幾三俺ら東京さ行ぐだ』や山田邦子『邦子のかわい子ぶりっ子』をジャパニーズラップの嚆矢とする説を採用するとしても、ストリートとかゲットーとは無縁のネタだもんね」

サ「ちょっと参考までに『邦子のかわい子ぶりっ子』も貼っておくか。トラック、といっても生演奏なんですが、めっちゃファンキーですからね」


邦子のかわい子ぶりっ子(バスガイド篇) - YouTube

佐「やっぱり何回聴いてもすげぇな、リリック(笑)含め。ララミー田吾作って何だよww そう、日本のラップってストリート発じゃなくて、好感度人間が輸入してたり芸能ネタだったりなんだよね、そもそもが。だから日本人にとってナチュラルな流れでたどり着くのがデラなんじゃないかと」

サ「まぁ『日本に本物のストリートはあるのか』って話になるとさ、またアツい議論になるからキリがないんだけどね」

佐「そうそう、Zeebraパイセンにちゃんと挨拶したのか、みたいな話にもなるしww ま、デラっていいよね、ってことで」