布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

殿の世界

佐藤「最近さ、もう何回目かわかんないけどたけしブームでさ」

サトー「あー、ようつべとかよく見てるもんね」

佐「やっぱりこの人かっこいいなぁとか、好きだなぁとか、とにかくなんか引き込まれちゃうんだよね」

サ「それは昔の殿?」

佐「やっぱり80年代後半からバイク事故前までが、お笑いタレントとしては最盛期だったと思う。でも近年も瞬発力とか切れ味と引き替えに滋味みたいなものがあって、たとえば「笑っていいとも!」の最終回ゲストのやつとか、やっぱり面白いなと。昔も今もいいよね」

サ「でもさ、殿って面白さってことでいえば、たとえばセンスでは松本人志とかもっと上がいるし、話術ってことでも紳助とか上岡龍太郎とか関西系のほうが切れてるし、芸ってことならいくらでも上がいる。でもやっぱり、トータルの魅力であの人に敵う存在っていないんだよな」

佐「しかもそれはマルチ人間って意味じゃなくてさ。アウトプットの幅が広いのは結果論みたいなもんで、何やってもたけしはたけしなんだよね、笑いも芸事も映画も。そんでその殿の世界観ってのが、実は曲にすごく現れていることに最近気づいたのね」

サ「なるほど。殿は音楽家としても独自の立ち位置だよね、人気タレントの余技の域を完全に超えてるけど、クオリティでプロに並ぶってわけでもない。でも表現としての強さっていうか、とにかく魅力あるよね」

佐「まず殿の代表曲であり、作詞のみならず作曲も手がけた「浅草キッド」なんだけど」

サ「ああ……もうこの動画、何回観ただろうな。最高にかっこいい」

佐「この曲には見事に〝足立区のたけし〟が出てるよね。人情に厚く、優しくてシャイで。あと求道的な生き方の悲哀みたいなものが感じられるなぁ」

サ「男が惚れる男って感じ。この曲聴くとさ、『キッズリターン』を思い出すんだよね。あれはボクシングだけど、なんか追い求める感じとか、それに伴う挫折の悲しみとか。あとヘミングウエイじゃないけどさ、〝男だけの世界〟って感じしない?」

佐「ああ、マッチョって意味じゃなく、すごく男臭いよね、この曲も『キッズリターン』も」

サ「とにかく殿のやさしさがたまらないです」

佐「そんでね、殿は芸人では稀有な理系人間なんだけど、科学少年のピュアさが次の曲にはよく出てると思うんだ」

サ「……ええ曲すぎるやろ。そして玉置浩二の神がかった歌!」

佐「これ、殿も一緒に歌うはずだったんだろうけど、玉置浩二の圧倒的な歌唱の前にただ聴き入るだけ、歌わないってのがいい。殿らしいよ」

サ「星とか宇宙とか時間とか、そういったものに文学性じゃなくて物理っぽい好奇心で迫っていくのが殿らしいよね。この感性って他にないっていうか、殿の表現の独自性を裏付けるポイントじゃないかな」

佐「科学少年のピュアなまなざしって、手塚治虫もまさにそれだよね。殿はスポーツ、特に野球が大好きだけど、殿の野球愛ってのもそんな感じなんだ。我々みたいな贔屓チームの応援っていうファンじゃなくてさ、野球そのものに対する真っ直ぐな敬意と憧れっていうか。宇宙や星に心を奪われるように野球を愛してる感じがするよね」

サ「最盛期は年間150試合、草野球やってたらしいから。プロより多い。そんで殿はどんな若い子でも、野球選手には敬語でさん付けだもんね。よっぽど尊敬してるんだろうね」

佐「それにしてもこの頃の玉置浩二はすごいな……。さて、最近では存在そのものというか、もう人間性が芸風というか、芸能界的には別枠にいる殿だけど、やっぱり時代のトップランナーだったんだよね。一線級のエンターテイナーだった。眩しいばかりの殿が次の曲にいる」

サ「ああ、もうダンスをけっこう真面目にやってるのが愛おしい……抱きしめたい!」

佐「純粋にいい曲だよね。これ作詞は「関口敏行・伊藤輝夫」名義なんだけど、関口さんってのは英語の専門家。伊藤輝夫さんって要するにテリー伊藤ですよ。勝手な想像だけど、テリー伊藤が世界観を提示して関口さんがまとめた、そんな感じじゃないかな」

サ「なんかさ、松方弘樹はちょっと上だけど、団塊世代の一番輝いてた時代っていうか、あの世代の仕事の最高峰って感じがする。あの頃の殿と周りにいた人たち、景山さんとか、ホントかっこよかったし憧れた。あんな大人になりたいって子供ながらに思ってたよ」

佐「これホントいい曲だよな、完璧だよ。殿のボーカリストとしてのキャリアで言っても一番いい。曲が声に合ってる」

サ「いやー、殿の曲いいね。純粋に笑いってことでいえば、やっぱりダウンタウンが頂点だと思うんだ。でもね、たとえばテレビつけてて殿が出てきたら釘付けになっちゃうんだよね、何言ってるか聞き取れないとこも結構あるのに。面白いかどうかも、まぁ面白いんだけどあんまり関係なくて、とにかく見ちゃう」

佐「たけしって何なんだろうね、ホント。ただ言えるのは、我々は殿を見て大きくなって、殿に憧れ、殿に感動させられ、今も殿が好きだという。とにかく、テレビで殿の元気な姿が見られるだけで嬉しい」

サ「そうだねぇ、ホントそれ。殿はいま68歳か……いつまでも元気でいてください」