本物とフェイク
おはようございます、まくらことばのさとです。
今朝はこのしっとりした天気に、無性に「ノルウェイの森」が聴きたくなりました。
うん、やっぱりいい。
この邦題は誤訳で有名ですが、「ノルウェイの家具」だったら今日のような朝に聴く気にはならなかっただろうことを思うと、「森」でよかったのかなと思います。
さて。
そうですか、ゆーさんはリュックの利便性に目覚めましたか。
私も近年はリュック派に宗旨替えして久しいのですが、これから秋~冬と推移していくシーズンにあたり、一つ困ったことがあります。
ここ数年愛用しているジャケット(というかコート?)なんですが、これがオイルを表面に染み込ませた「オイルド・ジャケット」なるシロモノでありまして、取扱い説明書には「電車や自動車などの乗り物に乗る場合は着用をお避け下さい」とまず注意書きしてあるという理不尽極まりない服なんですね。
そんでもこれすごく気に入っているから普通に着用して電車も車も乗っているのですが、さすがにリュックとの相性は悪いみたいで。
とくにリュックのひもが当たる肩口などオイルの抜けが著しい状態でありまして、そろそろオイルを充填しないといけないくらいになってきました。
というわけで、冬場はリュックはおろかショルダーも気が引けるのですが、ADの言うようにリュックの機能性には何ものにも代えがたい。
しかも最近、私は行きつけのお店で非常にかわいいかつかっこいいリュックを見つけてしまい、もう喉から手が出かかっている状態ではあるのですが、件のオイルドジャケットのこともあって踏みとどまっている次第です。
……という感じで余計なおしゃべりならいくらでもというこのブログ、どこからどこまでが【番外編】なのかと問いを立てれば、そもそも本筋なんてあるのかという話にもなるわけで、あ、でも一応バンドのブログなんで音楽が本筋か、でも限りなく雑談テイストになっちゃうよなぁと思いつつ、やっぱりちょっと音楽の話でもしましょうか。
最近ね、や、最近っていうか昔からそうなんだけど、ギターロック、それもオルタナ以降のやつが全然聴く気しないっていうか、なんていうか。
シャッフルで流しててたとえばweezerあたりがかかったら飛ばしたくなっちゃうような気分がすごくあるんですよね。
なんていうかタルいのよ、メランコリックなメロに轟音ギター、はいはいって感じで。
じゃあ逆にどんな音楽にピンとくるのかといえばやっぱりグルーヴがあるやつ?具体的にはR&Bとかソウル、ファンク的なのがすごく聴きたくて、ロックやポップスでもその辺の要素が入ってないとキツいなと。
そんで私、ロックリスナーの典型で70年代までのそういった音楽――スライとかカーティスとかアイズレーとかはひと通り押さえたつもりなんですが、80年代以降のブラックコンテンポラリー、いわゆるブラコンってほとんど聴いたことなかったんですね。
たぶんブラコンってロック好きな人、特にバンドやってるような人って結構スルーしてきたジャンルだと思うんですが、この辺りのカルチャーに好き嫌いはあるにせよ、音楽としての完成度では相当にすごいわけで。
ていうかアメリカのチャートでロックバンドで売れてるのなんてほんのわずかで、ほとんどがブラコンで占められてるもんね。
やっぱり音楽産業としてビジネスの規模が全然デカいから、プロダクションに掛けられるお金もロックなんかとは桁違いなんだと思います。
私は個人的嗜好性としてどうもB系カルチャーってのが苦手で、ヒップホップは例外的に好きですが(といってもデラソウルとかいかにもロック好きが好きな感じの)、聴かず嫌いの最たるモンがこのブラコン界隈だったりします。
なんだけど最近は年をとって変なこだわりみたいのがどんどんなくなってきてて、単純に聴いてて気持ちいい音楽が聴きたい!ってなってるので、そうなるとブラコンってやっぱり一番最初に手をつけるところだよね、と。
そんで、とりあえず有名どこから聴いてみっぺと最初に買ったのがこれ、TLC「CrazySexyCool」。
うん、やっぱりいいですよね、何を言うか今更。
なんだろうなー、この辺の曲ってテンポ自体はすごくゆっくりじゃないですか、なのにこのノリの良さはなんじゃらほい。
演奏?っていうかトラックもすごくシンプルで、ドラム3点セット+ベースくらいなのになんでこんなに充実してるんでしょうね。
そんでもってヴォーカルの素晴らしきことよ。
技術的に巧いってだけじゃなくて、なんか問答無用でゾーンに入る気持ちよさがある。
このヴォーカルにわりと自由っぽいラップが絡んできたりするわけですが、ヘッドホンでじっくり聴くも良し、車で流してBGMにするも良し、体を揺らしながらフィジカルに楽しむのも良し。
なんかアメリカで、てか世界中で売れるのもわかるよね、とにかく機能的なんだもん。
ところで、この辺の音楽って絶対日本人には無理っていうかできないと思うんですね。
B系カルチャーが嫌いになった理由のひとつに「妙に本物志向の人が多い」ってのがあって、たとえばレゲエだったらボブ・マーリーとか妙に神格化してる感じしない?
そんでもって「お前は本物がわかっていない」みたいな感じでさ、うるせぇよ馬鹿みたいな。
もうさ、この黒いフィーリングって絶対日本人には無理なんだから、変に頑張って本物に近付こうとするんじゃなくて、自分なりの批評性みたいなものを基軸に、自分にできることに解釈しなおしたほうがいいと思うんですよね、あこがれつつも真似はしないっていうか。
これロックもそうなんですが、やっぱり本場はアメリカだって思うんです、誰が何と言おうと。
それで日本人とかもしかしたらイギリス人も、それにあこがれてさ、自分なりの表現を見つけるというか「翻訳」をするところに、本場以外の場所における音楽の面白さがあるような気がします。
考えてみたら自分の好きな音楽って、やっぱりどっかフェイクっていうか。
例えばハイラマズはビーチボーイズの、ケイクは土着のカントリーミュージックの(ケイクはアメリカ人だけどね)、小沢健二はモータウンのフェイクであって、そこがいいというかぐっとくる。
なのでTLCみたいなホンモノのブラコンを聴くことは、これは素晴らしい音楽だけど日本人には無理だ、おれたちはおれたちで楽しいことやろうぜ、という気分を新たにする経験のような気がします。
もし日本に本物があるとすれば、それは演歌とか民謡なんでしょうね。
なんだけど今のところ、それらをポップミュージックに取り入れるのはネタの範疇にとどまっているわけで、やっぱりこれからも海外発の音楽を自家薬籠中のものとして日本のロックやポップスは作られていくし、そこにこそ面白さがあるのだと思います。
この話って実はいろんな分野に応用できてさ、例えばメジャーリーグとプロ野球とか、欧州車と日本車とか、フェイクとして独自の進化を遂げてきたからこそ面白いってのが日本にはいっぱいある気がするなぁ。
あ、ブラコンは引き続きいろいろ聴いていきたいので、なんかおすすめのアルバムがあったら教えてくださいね。