ユニゾンにはご用心
音楽用語「ユニゾン」は同じ音程の音が重なった状態のことで、同一の旋律を複数の楽器や音声で演奏することを言います。
と、杓子定規な説明をすればかえってわかりにくくなるくらいおなじみの音楽用語だと思われ、日常会話でも同じことを複数の人が同時に発言したりしたら「何ユニゾンしてんの!」みたいな使い方を多くの人がしているのではないでしょうか。
バンドアレンジにおけるユニゾンというのは、劇薬というか奥の手的なもので、効果が非常にわかりやすいためかえって演奏者のセンスが問われる、簡単なようでいて相当試される手法です。
なんか身も蓋もないんだよね、ユニゾンって。
それをかっこよくまとめるためには、下世話ぎりぎりで反転する絶妙のセンス、ユニゾンで押し切っても聴くに耐えうる強靭な曲のストラクチャー、そんなものが求められます。
料理で言うとなんだろなー、カレー以外で使うカレー粉的な感じかしら。
それ自体優秀な調味料とわかってはいるんだけど、いかんせん強力すぎて料理がカレー一色に染め上げられてしまう。
上手くいけば美味、失敗すればデリカシーのない大味、しかもそれが紙一重のさじ加減にかかっている、そんな難しさがあります。
そう、ハマれば猛烈にかっこいいのがユニゾン。
たとえばこの曲。
いやー、かっこよくないですか?
ボーカルとギターリフ、それからなんだ、重いストリングスみたいな音がずっとユニゾって最後まで押し切る力業ですよ。
このあっけらかんとしたわかりやすさがT.REX最大の魅力で、これやってかっこいいんだからマーク・ボランはやっぱり天才としか言いようがない。
T.REXってどの曲も超キャッチーだけど消費されちゃうような弱さとは無縁、めちゃくちゃ強いんだよなー。
ブルースから発展したハードロックって展開で聴かせるかっこよさが主流なんですが、このバンドはなんか曲全体が一個のリフというか不可分な音の塊として迫ってきます。
でもマーク・ボランって信者さん多いからなー、生半可なこと言ったら怒られそうな気がして、すごい好きだけど触れるのははばかられるんですよね……。
次は、忘れてしまうにはあまりにも惜しいスウェディッシュロックバンド、アトミック・スウィングの代表曲。
これも下世話なまでにわかりやすいですねー、サビのメロディラインとギターフレーズが一体化してるもん。
でもなんだろ、曲全体に緊張感というかドライブ感があるから、予定調和な感じがしない。
くそキャッチーなコーラスと非常に男っぽいヴォーカルは一見アメリカン・ハードロック風でもあるんだけど、妙に60年代風の音像がやっぱりヨーロッパ風味なんですよね。
この人、ライブでも歌いながらこのユニゾンギター弾いてたらしいから、相当な腕前の持ち主です。
ライブで盛り上がりそうですよね、みんなで歌えそう。
そしてとかく難解と評されるこの人にもユニゾン曲が。
歌とエレピがもろにユニゾンなんだけど、展開にしたがって絶妙にヨレてくるこのセンスね。
ずっと16分を刻んでるベースが効いてるんですかね、よくこんなアレンジ思いつくなぁ。
ザッパはねえ、マイルス・デイヴィスとかと一緒で、もうその人が一つのジャンルじゃないですか、だから聴くんだったら道場の門をたたくつもりで臨まないとダメなのかなぁと思って長年放置していたんですが、今日日はようつべがありまっしゃろ、つまみ食い的にちょこちょこ聴けるいい時代になりました。
そんで思ったより聴きやすい曲もあって、そろそろなんかアルバム買おうかとも思うんですが、そうなるとどっから手をつけていいかまたわかんなくなるんだよなー。
やっぱりユニゾンを大胆に取り入れることができる人って、どっか突き抜けてると思います。
ほんとこれ紙一重の大技なので、たいがいはこんなにかっこよく決まらないですよ。
まぁこの中ではアトミック・スウィングは結構ぎりぎりを舐めていった感じですが、それでもダサい一歩手前できれいに反転してますよね。
とはいえくれぐれもユニゾン、取り扱い注意ってことで。