布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

25年目のフリッパーズ・ギター

おはようございます、サトー@まくらことばです。

 

先週ですか、練習に先立ち我が愛器シンラインの弦を張り替えたのですが、なぜかそこから2弦を抑えるとみゃーみゃーとシタールのような音色が出始めまして。

どこかのフレットに弦が当たっているとこうなるのですが、弦高を上げても一向に症状が改善されないため、ネック周りのメンテナンスも含めギターショップに検査入院させてきました。

ま、たいしたことないと思うんですが、シンラインのない今週は妙な欠落感におそわれておりまして、やっぱり自分はあのギターが気に入っているんだなぁ、と改めて感じる次第です。

 

さて、この前始まったばかりと思っていた2014年も、すでに折り返し地点を過ぎて久しいわけですが、2014年といえば、フリッパーズ・ギターのデビュー25周年の年にあたります(唐突だなぁ)。

25年……そうか、例えば1995年の時点で25年さかのぼると1970年、つまりビートルズが解散した年ですよ、1995年の段階でビートルズ云々とかってもう年表に収まった歴史上の話に感じられていたから、今の若い子がもしフリッパーズのこと知ってても、それは歴史のお話なんですね。

いや、我々にとってフリッパーズって全然歴史じゃなくて、今も半分に切ったばっかりの柑橘類みたいなみずみずしい存在だったりするから、25年という時間の経過がにわかには信じられない気分です。

 

とはいえ、私はリアルタイムでフリッパーズを聴いていたわけでなく後追い組でありまして、もっといえばオザケンのソロ1stのほうを先に聴いていたりします。

ちなみに我が郷土でフリッパーズおよびその辺の音楽(というか文化)を伝道したのはAくんのお姉さんで、そこからAくん→KJHくんという流れができ、KJHくんが渋谷系全般を掘り下げたうえでサトーに編集テープを布教、それが予備校時代1995年のハナシ。

この「予備校」ってのがキーワードで、私が初めてフリッパーズの曲を聴いたのはTVドラマ「予備校ブギ」の主題歌「恋とマシンガン」なわけよ。

「恋とマシンガン」を初めて聴いたとき、私は「ポップな曲だな」「カルロストシキ系のボーカルだな」くらいの感想で、特にハマることはなかったのですが、件のKJHくんの編集テープに入っていた「午前3時のオプ」を聴いた瞬間、「これはすごい! これなんて曲?」と興奮したのを思い出します。

それまでフリッパーズおよび小沢健二のことは、世間で言われているくらいのことしか知らず、どちらかと言えば軟弱で軽い人たち、程度の印象しかなかったのですが、「午前3時のオプ」に横溢する反骨精神、疾走感、そして見事に切り取られた青春の風景……私は一気にフリッパーズおよびダブルKOの表現世界にのめり込むようになりました。

 

もともと私は「ロック」、とりわけ「パンク」を標ぼうしている人たちって好きじゃなかったんです。

それは別にピストルズとかクラッシュが嫌いってことじゃなくて、過激なことをやったり派手なことをやるのがロックで、反体制で、かっこいいんだという人たちが大嫌いで、田舎でロック好きといえばその手の手合いが多かったものだから、より一層嫌悪感をもっていたわけです、革ジャン着てボロボロのジーパン履いて髪染めてピアスあければロックかよ、馬鹿じゃねえのって。

ていうかそんな記号をまとっていなくても、ザ・スミスこそが過激で反骨精神の塊じゃないか、こういうのがロックなんじゃないの……。

そんな当時の私に、「ああ、日本にもスミスみたいなバンドがいたんだ!」と初めて思わせてくれたのがフリッパーズであり、「午前3時のオプ」だったんですね。

 

そうやって私は、ロックの反骨精神みたいなものをフリッパーズに見出してハマっていったわけですが、その後は次第に曲の完成度、なにより文学性と切れ味鋭い批評性に富んだ歌詞に夢中になっていきました。

フリッパーズを聴いた人が誰でもそうであるように、あの3枚のアルバムはどれも自分にとって特別なものだし、それぞれに良さがあるというか、「もうこんなアルバム2度と出てこないんだろうな」と思わせる作品ばかりです。

 

フリッパーズは私にとって、正しく「男の子のバンド」です。

それは男にしかわからないってことじゃなくて(実際女性ファンのほうが多いですよね)、「男の子」にしか歌えない歌を演奏していたバンドだってこと。

世界はすべて自分のもののはずなのに、おれのものはこの現実世界に何一つないという絶望感、あっという間に過ぎ去ってしまう青春の時間に少しも駒を進めることができない焦燥感、そして女の子の視線ひとつですべての意味が反転してしまう日々に生きる高揚感――そういったものすべてが、ナイフを入れたばかりの果物のような新鮮さで永遠にパッケージされた奇跡のバンドであり、イノセントな「男の子」の完璧な代弁者がフリッパーズ・ギターです。

考えてみればそんなバンドが長続きするはずもないわけで、あのサドンデスとしか言いようのない解散も、いかにもフリッパーズらしい、そしてあの時代らしい出来事だったように思います。

 

25年たった今も、たまにフリッパーズの曲を耳にしたりすることがあると、なんとも言えない感情が胸にこみ上げてきます。

フリッパーズってなんか夏なんだよね、それもうだるような暑さの夏ってイメージ。

ちなみに私が一番好きなフリッパーズの曲は、「Big Bad Bingo」です。


The Flipper's Guitar - Big Bad Bingo - YouTube