中の人対談
佐藤「どうも、サトー@まくらことばの中の人、佐藤と申します」
サトー「なんだよ、急に出てくるんじゃないよ。だいたいあんた仕事中じゃないの?」
佐「や、いまはアモルファスな時間。あいまいな色が好き」
サ「まいいや。で何の用なの? テラスハウスについて質問があるんならおれじゃないよ」
佐「その件はね、ヤフコメでひと通り。いや違うよ、まくらことばの活動についてどうなってんのかな、と。最近あなた、輪をかけてどうでもいい話ばっかりじゃないですか」
サ「ああ、あんたの職業的因習でもある進捗確認という名の催促ね。や、新しい曲を作るべく、ぼちぼち手を動かしていますよええ」
佐「具体的には?」
サ「イラッとくるなぁ! だからさ、最近は『詞先』のほうが作業がはかどるって感じだからさ、まずは歌詞を、歌詞的なものをつらつらとね」
佐「ほう。また相変わらず、遅れてきた青春的な感じのを?」
サ「……いちいち触るよね。いや、もうあの路線はいいかなって感じ。ていうか今の気分的にonじゃないでしょ。もっとなんていうかなぁ、絵画的っていうか写真的? 物語よりも場面がフラッシュするような感じの歌詞が書きたい、とは思ってる」
佐「私もそのほうが好みですよ、最近は。この頃の若い人たちって、歌詞がすんごくいいよね」
サ「例えば?」
佐「最近あなたがやたら気に入ってるceroとか、yogee new wavesとか。ま、あの辺は音もいいよね、渋谷系のアップデートって感じで」
サ「おれはね、泉まくらっていうヒップホップMCにやられた。すごい生なんだけど可食部分が多いっていうか、ちゃんとパッケージされてるのよ、色物サブカル物件じゃなく文学性があるっていうか」
佐「最近の子は変な野心がないからね、天下獲ったる的な。でも不自然なまでの等身大志向でもなくて、ほんとに顔の見える範囲に向けてやってるのがネットを通じて広がって、みたいな感じだよね。だから最大公約数向けの白々しさもないし、あまりにパーソナルで痛々しい感じもしない」
サ「いわゆる意識高い系のコミュ力とは違う文脈で、最近の20代って距離感がいいなぁって思うよね。世界との付き合い方がうまい」
佐「われわれはさ、決死の勝負に挑むか引きこもるか、デッドオアアライブ的なクソ覚悟を善とする価値観がね、どうしても。そんなおおげさじゃなくてもね、身の回りをきちんと測量すれば、それなりの景色って見えてくるってのがわかってる感じがしますな」
サ「……なんかさ、ヘンに若者に理解を示すというかにじり寄ってる感じがちょっとヤなんだけど、なんなの?」
佐「ちょっとちょっと、人をエコロハス親父みたいに言うのはやめなさいよ!」
サ「とれたての野菜を畑でかじらせて『甘いだろ?』的なお仕着せの(笑)」
佐「もうその辺の感じが一番イヤ。私はやっぱり合成着色料たっぷりの駄菓子で育ったからね。森の声に耳を澄ますとか、僕ええですわって感じ」
サ「なぁ? なんだかんだ言ってあれでしょ、最近一番感動したのはやっぱり……」
佐「シャーデーの『kiss of life』! もうあれが夕暮れの車内でかかった瞬間にさ、ああ、世界はなんて美しいんだ、と」
サ「もうバブル親父ばりの即物感、あきれるね。けどさ、やっぱり音楽は添加物多めじゃないと」
佐「や、シャーデーは今聴くと音楽としてはすごくオーガニックだよ。ただ当時の受容のされ方が問題であって……」
サ「まぁいいからいいから。その辺からさかのぼってAORがやっぱり好きだもんな、おれたち」
佐「そうだ! 次のまくらことばの方向性はAORでしょ!」
サ「うーん、あれは難しいからなぁ、やりたいけど。とりあえずカッコから入るってことで、ボズ・スキャッグスみたいな肩パット入りのジャケット買おうかな」
佐「……いいから早く歌詞書けって」