やっぱり天才です
今年は年明け早々、芸能ニュースがすごいですね。
幅広い世代がネットを通じて自分の意見を世に出せるようになったところでこれほど「語りたい」話題が連鎖すれば、祭りが終わらないのも当然で。
やや陰謀論めいてくるのですが、ここまで話題が豊富だと裏で何かよからぬ事態が進行してるんじゃないかと、ふと心配になってきます。
まぁでも大丈夫か、そうなったら文春がすっぱ抜いてくれるだろうから。
あれってスタート地点では文春が他のメディアに比べて多少取材力に秀でていたんだろうけど、あとはいいネタがどんどんあそこに集まってくるという、いわゆるポジティブ・フィードバックが働いてるよね。
モテる奴はなぜモテるのか? それはすでにモテてるから、っていうゲームのルールですわ。
さて、そんな話題の中で名前が挙がった一人に川本真琴がいます。
一体何があったのか本当のところはさっぱりわかんないですが、世間のリアクションとしては「痛い」という意見が圧倒的に多いようですね。
痛い……確かに世に出ている情報だけ追っていけばそういう見方になるんだろうけど、私は彼女の才能は今もって他の追随を許さないレベルにあると思っているし、よしんば痛いとしても、それが彼女の創作活動の源泉になっている部分もあるわけで、いまさら鬼の首を獲ったように「痛い女だ」とか言っても、それはポストに向って「赤い!」って言ってるようなもんだろうよ、と。
川本真琴が「愛の才能」で世に出てきたのは1996年、もう20年前か。
あれはホント衝撃でした。
あの曲は岡村ちゃんの作曲でしたが、誰がつくったとか関係なく、あの早口言葉をポップソングに詰め込むことができる人ってもう天才なんです、無条件で。
あれは技術的にウルトラC難度の荒業ですからね、もちろんやりゃあいいって話じゃなく、ちゃんと作品としての必然性があった上での早口言葉ね。
私の知る限りでは、川本真琴、小沢健二、小山田壮平の3人が天才的な早口言葉の使い手だと思います。
ミリオンセールスを記録した1stアルバム「川本真琴」は本当によく聴きました。
「愛の才能」ももちろん大好きなのですが、私が一番好きな曲は「タイムマシーン」。
この曲は歌詞がとにかくすごくて、当時私は写経よろしくノートに書き写したものです。
「タイムマシーン」は異常なまでにリアルな恋愛ストーリーで成り立っていて、おそらく彼女自身の体験をそのまま歌にしたものでしょう。
情景描写だけで物語の背景を余すところなく伝えてしまうストーリーテリングの力量、感情を言葉に置き換える際の高い技術、意味だけでなく言葉の響きそのものにも工夫を凝らした作り込み、どれをとっても誰にも真似のできない領域にある歌詞だと思います。
たとえば、
「「じゃあ、またね」なんて言葉は嫌い/テレビを見る気にもなれないよ」
というフレーズの驚くべき正確さと伝播力。
「だからさよならきっとできる/でもベランダではかないあたしはいったい?」
というヴァースも、揺れ動く気持ちをこれほどまで的確にとらえた表現はなかなかありません。
そして、1番の最初の言葉が「渋滞」なのに対し2番は「十代」という頭韻構造。
「明日変わるね/あたし変わるよ」というアナグラム。
リアルな内容でありながら、随所に言葉遊びを織り込むたくらみには本当に驚かされます。
アルバム「川本真琴」はこの1曲のために買っても損はないと思われる、そんぐらいの名曲。
それにしても英孝ちゃん、モテるなー。