TR先生
おはようございます、狛江市民です。
クリスマスも過ぎいよいよ年の瀬という感じになってきましたが、皆さんはどんな朝をお迎えでしょうか。
私はルーティン大好き人間ですので、この年末年始のざわついた感じがあまり好きではなく、1月4日あたりの騒ぎが収まっていく雰囲気に落ち着きを感じるものです。
今回の年末年始ですが、なんだかんだで帰省することにしましたので、まぁ大半は移動のクルマの中で過ごすことになろうかと思います。
えー、唐突ですが、トッド・ラングレンという人がおりまして。
まぁこの人もデヴィッド・ボウイ同様、時代によってころころスタイルを変える人でありまして、一概にどんな音楽をやっていると言い表すのが難しいタイプのミュージシャンなんですが、基本的にはポップな感じのロックというところが本拠地なのであろうと。
なんだけど単純にグッドメロディのポップスってのじゃなくて、ちょっとひねってあるというか、まぁ70年代後半以降はとくにそうなんですが、プログレッシブな感触もある、かなり手の込んだ音楽をやる人です。
日本でトッド好きといえば高野寛さんの名前が真っ先に思い浮かぶのですが、高野さんの音楽もそうですよね、単なる「いい詞・いい曲」にとどまらない汲みつくせなさがある。
この辺の音楽、まさに私の大好物なのですが、前述したようにトッドの音楽はかなり変遷しているので、実は自分的にストライクゾーンはそんなに広くないんですね。
まぁユートピアとかはあんまり聴く気がしなくて、それより70年代前半のソロ作品がとにかく好きで、中でもソロデビュー作*1「ラント~ザ・バラッド・オブ・トッドラングレン」というアルバムは、私のバイブル的な一枚として、折に触れて参照させていただいております。
今日はちょっと、「ラント」の曲を紹介しながら、メロディとハーモニーの魔術師、トッド・ラングレン先生の音楽について考察してみようかなと。
まずはアルバムの1曲目、「Long Flowing Robe」から。
Todd Rundgren - Long Flowing Robe - YouTube
うーん、いいですねぇ、アルバムのどアタマとして最適なグルーヴィーな曲です。
ここで注目してほしいのが、ドラムとコーラスの使い方なんですね。
この曲はトッドらしいグッドメロディを備えていますが、ギターや鍵盤などの和音楽器はあくまで添え物で、ドラムとコーラスでぐいぐい曲を引っ張っています。
や、これはね、ホントすごいことで、往々にしてメロディアスな曲を作る人って、アレンジの発想が弾き語り+αってなっちゃうんですね。
ていうのはギター一本、ピアノ一台でそれなりに良く聴こえちゃうから。
私はオアシス好きですが、あのバンドの曲は典型的な「弾き語り+バンド」の発想で作られておりまして、素材がいい曲はもう名曲中の名曲*2なんだけど、素材的にそうでもないアルバムの半分くらいを占める曲が全然良くないのは、アレンジの限界にすぐ行きあたっちゃうから曲の出来を持ち上げられないことに起因すると思っています。*3
トッドのこの曲はね、ドラムとコーラスが作る鉄壁のグルーヴがとにかく気持ちいい。
そこにいいメロがのっかっているという、まさにポップロックのお手本なんですね。
続いてこの曲、「Bleeding」。
Todd Rundgren - Bleeding - YouTube
これも「Long Flowing Robe」同様、曲全体をぐいぐい引っ張る表情豊かなドラムがすごい。
そして印象的なのが揺らしモノがかかったリードギターで、クライマックスのギターソロに向かってどんどん熱を帯びてくる感じがたまりません。
そしてここでもやっぱりコーラスは重要な役割を果たしておりまして、鍵盤レスとは思えないくらいこの曲がきらきら彩られているのは、緻密なコーラスアレンジとそれと呼応したキメが随所に仕組まれているからでしょう。
こういう曲聴くとね、ソングライティング以降の作業、つまりアレンジが何よりも大事なんだってことを改めて思い知らされますね。
そして最後は、しっとりバラード「Be Nice To Me」。
Todd Rundgren - Be Nice To Me - YouTube
これはね、多分トッド自身もこの曲を書き上げたとき、「おれやっちゃったかも」ってガッツポーズしたと思うんですよね、それくらいいい曲。
とくにBメロの、メロウさ200%増しの進行が素晴らしい。
雨の日とかに聴くと、一気に持ってかれちゃいそうになる悪魔的な美しさだと思います。
さらにブリッジのちょっと意外な展開も聴かせるよなぁ、って感じで。
これはね、前2曲とは違って「弾き語り+α」という発想のアレンジですが、そこはトッド、よく聴くとかなり手の込んだ仕事をしています。
最後のあたりに出て来るチャイム的な音とか、単純に音楽いっぱい聴いてるだけじゃなくて、日常のあらゆる音からインスパイアされてんだろうな、この人はと感じさせるアレンジだと思いますねぇ。
ちなみにこの曲、歌詞は鬼畜系で、「いいからやらせろや」みたいな内容なんですね。
この美しいメロディにそんな歌詞を組み合わせるいけず*4ぶりも、また魔術師トッドの一面かと。
ということでトッド・ラングレン「ラント」から3曲を取り上げてみましたが、他にもこのアルバムはいい曲が満載された捨て曲なしの名盤ですので、ぜひ聴いてみることをおススメします。
私にとっては教科書ともいえるこの一枚、アルバム制作にあたり、もう一度聴きこんでみようかな。