まくらファンのためのヒップホップレコメンド
今日のドラゴンズ戦でもし勝ったら、広島人の魂そのものであるあの赤い男達はクライマックス・シリーズ進出を決めるわけですが、秋雨の一日、みなさんはどんな朝を迎えたでしょうか、おはようございますサトー@まくらことばです。
えー、突然ですがみなさんはヒップホップお好きでしょうか?
たぶんこの“界隈”ですと、スチャダラパーとかソウルセット、かせきさいだぁなどのいわゆるLBネイション(懐!)系は聴いたけど、なんかそれ以外は怖いし……という方が多いのではないでしょうか。
また海外アーティストでは、デ・ラ・ソウルくらいなら聴いたよという方も多いのではないかと思います。
私も先日、ずっと聴いた気になっていただけのデ・ラ・ソウル「3 feet and high rising」を改めてちゃんと聴いてみたのですが、さすがに時代を作った名盤、色あせることのないポップセンスが横溢しておりました。
そうそう、最近読んだ本にデ・ラ・ソウルにまつわる興味深いエピソードが載っていたんですよ。
1996年11月29日、デ・ラ・ソウルは新宿リキッドルームで来日公演を行ったのですが、その前座がなんとフィッシュマンズだったんです。
しかもフィッシュマンズは、このデラの前座という場において、あろうことか、あのワントラックでアルバムが成立してしまった35分の大作、リリースしたばかりの「LONG SEASON」を初めてライブで演奏するという思い切ったことを!
デラを楽しみに来ていたお客さんは、そりゃもう口ぽかーん状態だったと思うのですが、実際どうしていいのかわからず、フロアを出て行く人もたくさんいたそうです。
そんな、突然「LONG SEASON」をかまされて立ちつくす人の中に、なんとオザケンがいたらしく。
オザケンのお目当ては当然デラで、彼は相当好きだったんじゃないかと思われます。
オザケンも最初、いきなり未知の音響空間を作り始めたフロントアクトに、「なんなんだよ、このバンド」と怒っていたそうなんですが、一緒にライブを観ていた人が「このバンド、フィッシュマンズなんだけど」と伝えると、彼は「えっ」と驚いたそうです。
そしてオザケンは、その後も腕組みをして、「LONG SEASON」が終わるまで観続けていたということです。
……なんだかすごいエピソードでしょ。
閑話休題。
ということでそういった文系ヒップホップにはなじみがあるけど、「さんぴんキャンプ」に参加していたようなハードコアな人たちというのはどうも苦手だ、いやそもそも聴いたことがないという方が多いのではないかと思います。
実際私も長い間そんな感じだったのですが、YouTubeなんかでちょくちょく聴いているうちに、これはなかなかいいんではなかろうか、みたいなヒップホップの曲やアーティストもちらほら見つかってきまして。
今日はそういった曲を少しご紹介できたらなと。
まずはくだんのさんぴんキャンプにも参加していた女性ラッパー、HACの「special treasure」から。
SPECIAL TREASURE / HAC - YouTube
いやー、この舌足らずなライムがクセになりますねぇ。
これトラックは確かECD氏の手になるもので、リフレインコーラスもかなり聴かせる曲だと思います。
この曲はその昔、バイト先の先輩が辞める時にくれたミックステープに入ってたもので、完全文系ルックスながらヒップホップDJだった彼が大好きだったこともあり、私にとっては忘れられない1曲となっています。
お次は私がヒップホップすげぇ!と目覚めた衝撃の1曲、Anarchy「Fate」。
Anarchy - Fate (日本語字幕版)MVA09 BEST HIP HOP VIDEO ...
いやぁ、どうですこのリアリティ。
表現のリアルさということでいえば、1970年あたりのジョン・レノンにも匹敵するような、すさまじい迫力がありますねぇ。
このPVはアナーキーが実際育った団地でロケされているそうで。
京都南部にあるこの団地は、シンナー工場の臭いが充満している文字通りのゲットーだそうですが、西日本特有の社会構造を背景にしたこの感じって、広島出身の私もすごくピンとくるものがあったりします。
夢も希望もあらかじめ回収されちゃったようなこの感じって、いわゆる新自由主義以降の格差社会とはちょっと別次元の、ホントfate=運命としかいいようのない重~い刻印のようなもので。
こういった空気を身にまとってここから這い上がっていく、というアナーキーのストーリーは、目が離せないものがあります。
そして最後に、みなさんお馴染み宇多丸先生のやっておられる大御所ヒップホップグループ、ライムスターのキラーチューン「Once Again」。
RHYMESTER - ONCE AGAIN - YouTube
いやこれはもう説明不要、全方位アンセムではないでしょうか。
この曲に何度励まされたことか。
これはね、もう「ヨイトマケの唄」とかと一緒で、人生において聴かなきゃならん曲ですよ。
ということで3曲ご紹介しましたが、特にアナーキーの動向には今後も要注目だと思います。
彼はあらゆるジャンルを見渡してもかなり稀有な才能をもった表現者だと思いますので。
その時代の才能がどのジャンルを選択するかって、かなり重要な問題だと思うのですが、最近はヒップホップに才能ある人が集まってるのかなぁ、なんて思う今日この頃です。