布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

ビートルズと私

こんにちは、無粋なおしゃべり野郎、まくらことばのサトーです。

 

皆さんはビートルズ、お好きでしょうか?

私はこのロック史上最大のバンドがやっぱり永遠の第一位というか、「結局おまえは何が好きなんだ?」と聞かれたら「ビートルズ」と答えるでしょう。

 

私がビートルズと出会ったのは小学校高学年の頃、3つ上の兄の部屋から漏れ聞こえる「イエスタデイ」や「エリナ・リグビー」でした。

当時兄が聴いていたのは、年代物のクソ重いラジカセで再生される、ホームセンターやファミレスのレジまわりで売られている海賊版カセットだったと思いますが、うっすらと聴こえてくるそれらの曲が、今まで自分の知っている音楽をはるかに超えた、信じられないくらい素晴らしいものに思えました。

中学に上がってからは、オリジナルアルバムを借りてきてダビングし、ラジオでかかれば録音し、新聞を隅から隅まで読んで「ビートルズ」の文字がないか探すような毎日でした(90年代のはじめでも、不思議と週に何回かは「ビートルズ」という言葉が載っていました)。

初めてお小遣いをためて買ったCDは「リボルバー」で、それこそ朝学校に行く前に聴き、帰ってからまたひたすら聴き……この世にはこんなに素晴らしい音楽があるんだ、とひたすら夢中になったものです。

 

その後ずっと音楽を聴き続ける中で、いろんなアーティストのいろんな作品に出会い、中にはファンと言えるくらい夢中になったバンドもいくつかありましたが、自分の人生に決定的な影響を与えたのは、やはりビートルズだと思います、世界中にそういう人が何億人もいるように。

 

ビートルズの何が素晴らしいのか――それこそどんなに語っても語りつくせることではないし、何を言っても言葉足らずになってしまうことは目に見えています。

ただここで一つだけ、いつ聴いても感動してしまう曲の話をさせてください。

 

1969年、「ゲットバック・セッション」が失敗に終わったビートルズは、ポールの呼びかけのもともう一度アルバムを作るべく、アビイロードスタジオに集まります。

ジョージ・マーティンがこの仕事を引き受けるにあたって出した条件は、もう一度昔のようなやり方で音楽を作ること。

つまり各自てんでんばらばらに作業する「ホワイト・アルバム」方式ではなく、皆で集まって、メンバー全員が何らかの形で曲に参加するようなやり方です。

この時期のビートルズですが、ポールはバンドを続ける意思を強くもっていたものの、ジョンはもうビートルズについては心ここにあらず状態、ジョージとリンゴも「ゲットバック・セッション」での確執をひきずっているような状態で、まさに空中分解寸前でした。

しかし演奏そのものは凄味を増しており、事実上のラストアルバム「アビイ・ロード」で聴ける音、とくにB面のメドレーは、最高傑作の呼び声も高いものに仕上がっています。

メドレーはジョン主導で作った前半も素晴らしいのですが、私は後半のポール作の3曲メドレーがたまらなく好きで、ビートルズが最終的に到達した地点として「これでしょう!」という圧巻の曲になっています。

 

「ゴールデン・スランバー」「キャリー・ザット・ウエイト」「ジ・エンド」と続くこの3曲には、ビートルズのラストメッセージともとれる印象的な歌詞が付けられています。

ビートルズは、私がまさにそうであったように多くの聴き手に対し人生レベルの影響を与えたバンドで、彼らが引き受けた人生の数(驚くべきことにそれは今も増えている)は、それこそ星の数にも及ぶようなものがあるはずです。

このメドレーの歌詞には、メンバー間での解散をめぐるメッセージとかいろいろな解釈が加えられていますが、私は純粋に、リスナーに向けて発せられた思いが込められているように感じます。

その思いとは、自分たちは無力だということ。

「キャリー・ザット・ウエイト」の「君はその重荷を背負っていくんだ」という言葉も、「ジ・エンド」の「君がその手でつかむ愛は君自身が作り出す愛のことなんだ」という言葉も、結局人生は自分自身で切り拓いていくしかない、僕たちは君の人生を引き受けることはできない、というメッセージだと、私はずっと思っております。

音楽史に不滅の足跡を残し、世界中の聴き手の人生に決定的な影響を与えたバンドのメッセージとして、あまりに誠実ではないでしょうか。

 

しかしビートルズは、「結局は君次第」という言葉を、厳しい現実を突き付ける冷たいものとしてではなく、あくまで励ましのメッセージとして放っているように思います。

それは「キャリー・ザット・ウエイト」の次の歌詞に表現されています。

 

I never give you my pillow

I only send you my invitation

 

枕は与えないけど、招待状なら贈るよーー安息は約束しないが、きっかけだけなら与えるというわけです。

私はこれからも、ビートルズから受け取った招待状を大切に、それに恥じない生き方が出来ているか、折に触れて自分を点検していきたいと思います。

 

……以上、不粋な男の余計なおしゃべりでした。