春雨に聴きたい
せっかく桜が咲いたというのに、雨模様が続きます。
春というにはまだまだ肌寒い日々の中、雨に濡れた街はくすんで見えるかもしれませんが、1枚のレコードが憂鬱を消し去ってくれることもあって。
春の雨の日に聴く音楽は、しっとりしているけど軽快さもあって、ときにエモーションを感じられるようなものがいい。
そう考えたとき、私はマリーナ・ショウの「Who Is This Bitch, Anyway?」をおすすめします。
1974年にブルーノート・レコードから発表されたこのアルバムは、間違いなくマリーナ・ショウの代表作であり最高傑作です。
ジャズシンガーとして名高いマリーナですが、このアルバムは完全にジャズファンクで、いわゆるモダンジャズとは全く異なるグルーヴィーな音像は、典型的な70年代の音といえるでしょう。
手練れのミュージシャンが多数参加したアンサンブルは極上の一言につきますが、やはり聴きどころはデヴィッド・T・ウォーカーのギター。
超売れっ子セッションマンであったデヴィッドTですが、このアルバムとAORの記念碑的名盤、ニック・デカロ「Italian Graffiti」 で聴くことのできるプレイは、唯一無二のギターサウンドを堪能させてくれます。
「Who Is This Bitch, Anyway?」は一つひとつの曲の粒立ちがよく、どの曲も聴きどころたっぷりの佳曲ぞろいなのですが、なんというかトータルで非常にまとまりがあって、一枚を通しで聴きたくなるレコードです。
私はこのアルバムを聴いていると、都会に生活することの素晴らしさを感じます。
雨に濡れたビル街、タクシーのテールランプが続く大通り、地下に続くバーのエントランス、遊歩道を埋めつくす桜の木々……そういった東京の光景が次々に浮かんでは脳裏をかすめていくのです。
今ウチにはターンテーブルがないのですが、アナログで持っていたいアルバムの代表格かもしれません。
さて、2周目を聴くことに。