もうすぐ春ですね
私の右手人差し指、第二関節と第三関節の間の指の腹には長さ1センチ、幅5ミリくらいの傷跡があります。
もう完治して久しいのですが、今もそこを触ると違和感というか感覚の違いがあるので、神経がちょっと違う感じになったままなんでしょう。
この傷は去年の11月、引っ越しの準備をしているときに負いました。
ちょうどマイクスタンドをたたんでいたのですが、あれって鉄パイプをプラスチックのネジで締めて使うもので、触ったことのある方ならお分かりいただけると思うのですが、かなり危険なブツで。
ネジを緩めた瞬間にスパーンとスライドしてくるときのスピードは、鉄パイプの重さを荷重されてかなりのものがあるのです。
その時も、不用意に緩めた瞬間、すたーんとスライドしてきて……指の腹の皮&肉をですね、ギロチン状態でぐしゃっとやっちゃったわけですね。
もう信じられない激痛が走って、直後シャレにならん量の血があふれてきました。
ちょっと近年にないケガだったので狼狽しまくったのですが、引っ越し準備の進んだ殺風景な家には応急道具もない、消毒液や絆創膏すら見当たらない。
これまいったなー、ととりあえず患部をぐるぐる巻きに圧迫して血を止めた状態で駅前の薬局に走りました。
そこで見かけたのは、キズパワーパッドなるもの。
ああ、なんか皮膚みたいな絆創膏してる人をたまに見かけるけどこれか、これなら水仕事も問題なくできそうだと、傷口に散布するスプレーとともに購入しました。
そう、私はそのとき、キズパワーパッドは単に「防水仕様の絆創膏」という認識で、湿潤療法という従来と異なる概念の傷治療用品とは知らなかったのです。
帰ったらすぐ、傷治療の王道は消毒&止血だと殺菌と乾燥作用のあるスプレーを傷口に吹き、その上にキズパワーパッドを貼りました。
ふう、これでなんとか日常生活に支障がないレベルまでもってこれたぜ、こんなことで引っ越し準備が滞ってしまうのはヤだからな。
……ここで私は大きなミスをおかしてしまったんですねー。
湿潤療法では傷口の消毒と乾燥はご法度であり、傷口をよく水で洗い流した後、そのまま密封してしまうことで常在菌が機能し自然治癒力を高めるのがその理路なんです。
その後、キズパワーパッドの説明書を読んだ私は、まったく間違った処置をしてしまったことに気づき、すぐにパッドをはがして規定の方法でやり直したのですが、初動処置を誤ってしまったのは非常に痛かった。
その後傷は治ってはいきましたが思った以上に時間がかかり、今も傷跡と違和感が残っているのは、ひょっとしたらあのミスのせいなのかと考えてしまいます。
まぁでも、一生ものの傷って誰にでもありますよね。
私もいっぱいあって、一番大きいのが左ひざの傷。
これは中学の時、釣りをしていて池の中に立ちこんでたときにずっこけて、岩でえぐれた跡ですね。
それから右足の親指と人差し指の間にある縫い傷。
これは小学生のとき、胡坐をかいてはっさくをカッターナイフを使って剥いていたとき、力が入りすぎてスパッと。
このときは傷が深かったので、さすがに病院に行って3針縫いました。
ほかにもこれは近年ですが、右腕に残るウサギに噛まれた跡。
長時間にわたってがぶっと噛まれたので、結構血も出たし跡も残りました。
それぞれの傷にはそのころの思い出というか、生活が深く反映されていて、それはそれでなんかメモリアルなものなのかな、そんな風にも思えます。
現時点では最新の一生モノ傷である右手人差し指ですが、それまでの生活に終止符を打ち、新しい生活を始めるための準備の最中に負った傷として、それなりに存在意義というか、刻印としての意味というか、そんなのもあるのかな、とか。
傷跡をぼんやり眺める私の周りには、また今年も花粉が飛び交い、三寒四温の日々がやってきているのでした。