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布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

「メンバーズオンリー」の壁の前で

「なんか最近おれ、昔の話ばっかりだなー」とこのブログを見て思うのですが、これからする昔話は私の気分がレイドバックしているからではなく、わりにセンシティブな話題なので他にもストックあるけど直近のエピソードを引いてくるのに適切でない、という事情によります。

 

大学のころ、私は今で言う“ぼっち飯”の常連でした。

その日も売店でサンドウィッチを買い、さてどこで食べようかと学生ホール的な机と椅子がばーっと並べてあるところで空席を見つけ、腰をおろしていざ食べようとしたのです。

そしたらどっかから女がやってきて、「あのー、そこウチのサークルの場所なんですけど……」と私に言ってきました。

私は一瞬なんのことかわからなくて「え、えっ!?」という感じだったのですが、とりあえず「そこどいて」という趣旨は伝わったので、「ああ、すみません」と小声で言ってそそくさと立ち去りました。

それから私がどこに移動したのかは忘れましたが、少なくともこんな恐ろしい場所には居られないと思い、学生ホールを出て行ったことは覚えています。

それ以来私は、(超短いですが)学生生活を終えるまで、ホールとか学食みたいな公共スペースには一切近寄りませんでした。

念のために言っておくと、その場所には何か目印や場所取りの荷物などなく、第三者には純粋な空席としか思えませんでした。

この「事件」は今でも思い出すと自分の中で何かが起動する(あるいはシャットダウンする)生々しさに満ちていて、たぶん一生忘れることはないと思います。

 

あのねー、こういう「メンバーズオンリーの壁」にはねっかえされた時って、当然腹も立つんですが、なんか哀しくなるのよ。

仲間外れとかシカトに対しては、もう100%怒ればいいんです。

そんでそういうことする奴と戦うもよし、縁を切るもよし。

だって仲間外れとかシカトって、それ自体が世の中にあってはならないものだからね、絶対的な悪。

でもね、メンバーズオンリーってのは非常に厄介で、それ自体は別に世の中にあってもいいものなんです。

場合によってはそういうルールを設定することによって、物事がうまく回るとか、クオリティが向上したりすることがあるかもしれないので。

だから私もその時、すごく腹が立ったと同時に、ローカルとはいえルールを知らなかった自分が悪かったのかなとか、そもそもおれ田舎者だから……とか、どこかで刃が自分に向ってくるのを感じたんです。

それはトータルでとらえるとすごく処理しにくい感情で、不正義に対して敢然と立ち上がるような単純なリアクションにはつながらない。

かといって自分の内部で消化することもできない。

もう哀しいとしか言いようがないのよ。

これ、そういう経験がある人なら絶対分かってもらえると思うんだ。

 

やっぱりね、そうすることに時として合理性があるとしても、不特定多数の人がアクセスする空間とか、いっけん門戸を開いている場所、つまりパブリックであることを織り込んで成り立っているところで、メンバーズオンリーを発動させるのはよくないですよ。

メンバーズオンリーやりたきゃ、徹底して他人の目が触れないところでやらないと。

あるいは会員制バーとか一見さんお断りの料亭みたいに、「そういうルールですよ」ってメンバー以外の人にわかるようにしておかないと。

そんで場の主催者がメンバーズオンリーというルールを設定するのは自由だと思うのですが、そのルールをインストールするかどうかもまた受け手の自由であることを確実に担保しておく必要があると思うんです。

もっと踏み込んでいえば、メンバーズオンリーというルール設定に対するクレームを言われたとき、主催者はメンバーズオンリーの壁にはねかえされた人が受けたのと同じくらいショックを受けるような感受性を常に用意しておけ、ということなんです、まぁ原理的にあり得ないことだとは思うが。

 

これってホントに難しい話で、単純に善悪で切って捨てることができないうえに、常に取り扱い注意の領域に存在してると思います。

あのね、たとえばADと私はほとんど自分たちの音楽の話なんてしませんが、それでも比較的よく出る話題、というか何度も確認しあっていることがあって、それは「まくらことばというバンドは誰に向けてやるのか」ということで、いつも「顔の見える範囲に向けてやる」ということを言ってるんです。

これは、「自分たちのやっていることがズレてないかを絶えず点検するために、最も厳しい基準を採用する」という意味であって、その効果として「より多くの人に伝わる」ことを目指したもので、メンバーズオンリーとは真逆の指向性だと自分たちは思っている。

でもね、それはメンバーズオンリーと非常に危うい関係性にあって、もう隣同士どころかちょっとクロスしている部分すら正直あると思うんです。

ということは、ほんの些細な何かのきっかけで、最も厳しい基準のつもりが最も甘い基準に変換されてしまう可能性を常にはらんでいる。

私は化学詳しくないから具体名は挙げられないけど、きっとそういう化学物質みたいなのあるんじゃない、人類にとってすげえ有用だけど、ちょっとした化学反応で途端に毒になっちゃう、みたいな。

だからそこはホント薄氷を踏む思いで慎重に慎重に運用してかなきゃいけないし、もし自分のやってることがメンバーズオンリーのルールに従うものになっていたとしたら、私はその瞬間にバンドもこのブログも、とにかく人様に何か伝えるような活動は一切やめます。

だってやっぱりそれはやりたくないことだし、メンバーズオンリーの壁にはねかえされたあの感情を知っているので。

 

以上、一昨日のozknの行動*1と、それが巻き起こした波紋から私が感じたことでした。

*1:直接行ったわけじゃなく、あくまでネット上で確認したものにすぎないのですが。