名曲「スポットライト」
8センチのシングルCDって今あるんですかねぇ?
90年代、ミリオンヒットがばんばん出てた頃って要は8センチががんがん売れてたわけで、今も30代以上の人がいる家庭にはいっぱいあるんじゃないかと思います。
8年ぶりの引っ越しに際して、当然家財一式の棚卸&不用品処分となったのですが、納戸の奥のそのまた奥から8センチCDが3枚だけですが発見されて、「あぁー、なくなってたと思ってた」と感激したんです。
その3枚ーーイエモン「So Young」、オザケン「戦場のボーイズライフ」、グリーディグリーン「スポットライト」。
あれ、「指さえも」とか「buddy」がなくなってる……おっかしいなぁ、どこ行ったんだろうか。
まぁオザケンはさておき、見慣れないアーティストが。
グリーディグリーン、実は一番聴きたくて、今回の発見がうれしかったのはこれなんです。
グリーディグリーンは90年代に存在したロックバンドで、ジャンル的にいえばフォークロックといった感じでしょうか。
ですがサニーデイのような和風テイストではなく、どこか多国籍風なところがあって、アメリカのたとえばザ・バンドとかその辺のアーシーな感じもあれば、憂歌団を彷彿させるブルージィかつトラッドな感じもあったりで。
楽曲はかなり練り上げられた歌モノなんですが、全体的な手触りはざらっとしていて、これは後出しジャンケン的な見方だけどちょっとポストロックに通じていくような感じがしなくもない、イナタいけど同時に洗練もあるという。
何より特徴的なのがヴォーカルの福岡さんの癖のある歌と声で、ここで好き嫌いがはっきり分かれるような気がします。
歌詞はナンセンスというのとは違うんだけど意味不明系です。
映画のワンシーンをつなぎ合わせたような印象で、メッセージ色は皆無ですが映像喚起力は尋常でない。
グリーディグリーンはエイベックス系のレーベル・カッティングエッジからメジャーデビューしていたので、当時のメディアにはそこそこ出ていたし、渋谷陽一がやっていたラジオ「ミュージックスクエア」ではけっこうパワープレイされていたそうです。
あと所属は吉本興業だったらしい。
今でも何曲かをYouTubeで聴くことはできるんですが、大名曲「スポットライト」は私の知る限りではアップされておらず、これを聴くためには私が持っているシングル盤かアルバム「MW」を入手するしかないと思います。
私がグリーディグリーンを知るようになったのは、たしかKJHくんが「いい」と言っていたからで、そんで当時バイトしてたCD屋にサンプル盤があったのでもらって帰ったんですよね(買ってないんかい!)。
そんで「ロッキングオンジャパン」の白黒ページに福岡さんのインタビューが出ていて、なんでも毎朝6時に起きてMTRに向かい曲を作っているということで、当時はまだセックス・ドラッグ・ロックンロールな人がけっこういる時代だったので「へぇ、ストイックな人もいるんだなぁ、おれも見習わないと」と妙に印象に残っていたのでした。
結局グリーディグリーンのCDはずっとその8センチしか持っていなくて、前の家に引っ越した時に見失ってしまったのですが、折にふれて「いい曲だったなぁ」と思い出してはようつべを検索してみたもののアップされておらず、もう聴けないのか……と少し残念な気持ちでいたのです。
そんなところに出てきたもんだからもう嬉しくて、繰り返し繰り返し聴いています。
やっぱり記憶にたがわない名曲でした。
憂いを帯びたメロディとシンプルだけど細かいひねりの効いたアレンジ。
癖のある歌でつづられるのは、全体としては意味不明だけど、それぞれはすごく立っていて刺さる言葉です。
聴いていると次から次にイメージが駆け巡ってちょっと体温が上がる感じがするんだけど、その世界は荒涼としていて寂寥感に満ちている、そんな感じでしょうか。
とにかく不思議な曲です。
グリーディグリーンはその後解散しましたが、フロントの福岡史朗さんは今も精力的に活動を続けていらっしゃいます。
結局私は「スポットライト」1曲しか知らないままですが、それだけでここまで印象深いバンドというのは他にありません。
中古で探してアルバムも手に入れようかと思いつつ、8センチシングルだけ持ってるというのもなんか悪くないなと。