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布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

車内広告の話

佐藤「はっきり言って今朝は怒ってるんだ」

サトー「(面倒くさそうだなぁ)どしたの?」

佐「半蔵門線の車内広告、窓に貼ってるステッカータイプのやつね、そこの上になんか政治的メッセージが貼られてたのよ!」

サ「どんなメッセージ?」

佐「そんなことどうだっていいんだよ! おれはその内容に怒ってるんじゃなくて、行為そのものに怒り心頭なんだ。誰だよ勝手に広告の上に貼りやがって」

サ「それはモラル的に?」

佐「あーっ、そんなPTA的観念じゃなくて! だから貼りたいんだったら広告の上に貼ってんじゃねぇ、どっかその辺の空いたスペースにでも貼っとけばいいじゃん。そんなの目にも留めないけどさ。広告の上に貼ってやったった感満載なのがホント腹立つんだよ」

サ「でも電車の広告なんて、どうでもいいようなもんばっかりじゃん」

佐「……あのなぁ、そりゃ確かにどうだっていいクソみたいなもんだよ、情報としてはね。件の広告だって美容整形かなんかのやつで、ベタに自己顕示欲の塊みたいな院長の写真が載ってるやつだよ。でもね、だからこそおれは車内広告、とくに貼り広告が好きなんだよ。曲がりなりにも正式なメディアとして世間に流通しているのに、あそこまで広告主の独善性があからさまな媒体も珍しいでしょ。おれはその独善性が世の中と触れ合う場面を見るのが好きなの!」

サ「独善性ってことでいえば、その政治的メッセージを貼ったおっさん――たぶんおっさんが貼ったと思うけど――のほうが上を行ってるんじゃないの?」

佐「透き通るようなアホか君は。独善性の度合いはここでは何の価値もないんだ。そうではなくて、世の中の各種手続きを経てもなお隠し切れない独善性の濃度、あるいは様々な淘汰圧をくぐり抜ける中で奇妙な突然変異を纏ってしまったその有り様、そういうのがたまらないんだよ。ただ独善的なだけのものって当たり前だけど不愉快でしかないよ」

サ「あー、君はユーチューバーとか嫌いだもんね。手続を踏まずに公衆の面前に出てくるものが好きじゃないと」

佐「ユーチューバーについては好きでも嫌いでもなくてどうでもいいんだが、原則的に物事ってプロセスが重層的であればあるほど鑑賞とか批評に耐えうるものに鍛え上げられていく、って考え方ではある。しかも一人の主体がつくりこんでいく職人的なプロセスではなくて、多様なステークホルダーの審問を通過してるってことが重要で。広告なんてもんは倫理規定も厳しいし、代理店という通俗の極みのような淘汰圧をくぐり抜けてきたわけで、手続的には最も独善性が丸められやすい媒体なんだけど、同時に広告主の自我を色濃く反映させる使命も帯びているわけで、その二律背反によって面白いアウトプットが出てくると思ってるんだ。とりわけ貼り広告はバジェット的に参入障壁が高くないだろうから、それこそ『おれは信長の生まれ変わりだ』みたいな夜郎自大な経営者とかが飛びつきやすいわけで、面白率がかなり高い」

サ「あー、僕は地方ローカルのCMが好きなんだけど同じ理路かもしれない」

佐「そうそう、あふれ出るひとりよがりが規格に収まった時の面白さってあるじゃん。たとえば貼り広告の王者で、長年にわたり他を寄せ付けないビザールぶりを発揮してる某苑の広告なんて……」

サ「あーっ、そこまでそこまで! それなぁ、無邪気に楽しみたい気持ちもわかるんだけど、なんていうかレリジョン的に香ばしい物件なんだよ。君子危うきに近寄らず!」

佐「あ、失礼しました。じゃあね、最近総武線あたりでよくみかける某スムージーの広告なんだけど、ぱっと見はそうでもないんだが、まぁとにかくじっくり見てほしい。やたらと要素の多い広告ではあるんだが、その「要素大杉!」ってことも含め、稀代のツッコミビリティ物件なんだよ」

サ「あ、知ってる、〝美香さん〟でしょ。匂い立つような独善性だよね、あれ」

佐「ウォーリーを探せ的にツッコミどころが見つかるという。もはやボードゲームに近い娯楽性だからね。他にも何か実用系の自費出版本みたいなやつで書影が素人クオリティのやつとか、大手製薬会社の制汗剤でもモデルの姉ちゃんが微妙だったりとか、とにかくテレビCMでは考えられない世界が車内広告にはあるのよ」

サ「おれからその楽しみを奪うとは何事かと。お前の政治的主張によって隠された部分におれの楽しみがあるんだと」

佐「そーゆーことです。加えてその政治的主張の悦にいった感じも腹立つ。なんかアイロニー利かせてるつもりなんだけど手垢のつきまくったストックフレーズの羅列でしかなくてさ。そんなのドヤ顔で貼られても、だからあんたらダメなんだよって」

サ「ま、政治の話では熱くならないほうがいいぜ。ところで君は貼り広告にこだわってるけど、車内広告の花形と言えば吊り広告じゃないですか。あれは面白くないの?」

佐「あー、内容的に面白いってのはあるし、実際おれの芸能情報の多くは週刊誌の中吊り広告で仕入れたものだけどね。でもメディアとしての破綻はあんまりない。だったら最近の新聞広告のほうがヤバいの多いよ、昔だったら考えられないクオリティの匂い立つような広告が結構入ってる。そんだけ新聞社の経営が大変だってことなんだろうけど」

サ「あ、最近テレビ局もヤバいんだろうけど、なんかこの前すげぇCM観たぞ! なんかEXILE風の男たちが裸で踊るやつ。会社名を連呼する歌もすごくて釘付けになった。会社名、なんて言ったかなぁ……」

佐「それ僕もさっきから思い出せなくて悶々としてるんだ。今度見たら即タグを打っておく!」