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布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

変わること、変わらないこと

佐藤「暑いね」

サトー「今年の暑さは異常だよね、毎年言ってるけど」

佐「そんな中、君はどんなことして過ごしてんの、仕事以外」

サ「そうね……なんか夜散歩が恒例化してきちゃってさ。このままレギュラー行事にしてもいいかなって思ってるんだ、例えば金曜日は夜散歩の日、とか」

佐「スタート地点が神保町・水道橋界隈ってのがいいよね。東京都心のさらに真ん中だから、全方位的にコースが選べる」

サ「新宿、渋谷、池袋くらいなら歩いて行ける。だからその間にどういったコースを挟むかってことが大事だね」

佐「そもそもおたくさん、昔からこの辺を中心に散歩してたじゃないですか。そういう意味では定点観測というか、この20年の変化がよくわかるのでは?」

サ「20年……そう、来年で上京20周年だわ。うん、大筋では変わらないんだけどやっぱり都心はどこも再開発されてるし今も継続中だよね。特に小~中規模のいわゆる雑居ビルが解体されて、どでかいビジネスビルに集約されるパターンが多い気がする、なんとかスクエアみたいな」

佐「明治期にまでさかのぼると、東京都心の都市開発ってのは大名屋敷跡地に何か造ることから始まったのよね。戦後は軍関係の施設跡地が広大な敷地でそこに何かできたり、高度成長期以降は倉庫とか工場が郊外に移転してその跡地にマンションが建ったり。そういう意味ではもはや、大規模な敷地が急に現れるというパターンがもうあまり残っていない。だからその辺のちっちゃい建物を集約するような再開発が多いんだろうね」

サ「大規模な跡地っていえばさ、新宿にイーストサイドスクエアってあるじゃん。あそこが日テレのゴルフ練習場だった頃って覚えてる?」

佐「ああ、覚えてる覚えてる。新宿って駅から同心円状に怪しくなっていってその後寂れていくんだけど、あのゴルフ場まで歩くとなんだかもう違う国に来たみたいな寂しさだったよな、国境超えて共産主義国に入ったか、みたいな」

サ「それは大げさだけど、新宿駅周辺から歌舞伎町とかゴールデン街、花園神社界隈を抜けてあれだからね。グラデーションがすごかったよね。だから昔は新宿JAMって彼岸と此岸の境界線上にある感じで怖かった、三途の川的な。今でも怖いっていうか、息詰まる感じはあるけどね」

佐「あの駅から遠い感じがね。東京ってシームレスに都市がつながっていくんだけど、やっぱり盛り場と盛り場の境界ってのは独特の静謐な空気が流れてて、夜散歩ってのはとりわけそれが濃密に感じられる気がする。街が途切れて次の街が始まるまでの間ってのが最近のテーマというか、一番いいなぁと感じるところなんだ」

サ「それわかるなぁ。昼間だとそんなに感じないんだけど、夜はすごくそこが際立つんだよね。例えば新宿と原宿の間とか、新宿と四谷の間とか、なかなかいい雰囲気だよな」

佐「その辺は60~70年代の建物が比較的残っていることもあって、この20年間だけで言ってもあんまり雰囲気が変わっていない。あと港区ってほぼ全域がそんな感じで、基本的に拠点となる街が地下鉄の駅だからそんなに街そのものが大規模じゃなくて、かつ住宅街とオフィス街、公園なんかが複雑に絡み合ってるから、数百メートル歩くだけで雰囲気が全然違ってくる。加えて坂が多い地形なので、自ずと街に表情がつくっていうか」

サ「曲がり角の先、坂を上り切った先にまったく違う雰囲気の街があるような場所が多いよね。ところでさっき君が言った60~70年代の建物なんだけど、この辺はいわゆる歴史的建造物になるのかね」

佐「いや、基本的に1945年以前の建物のことをそう言うんじゃない? 戦後の建物で重要文化財に指定されてるようなのって、よっぽど歴史的意義がないと無理でしょ。だからただの古いビルってことになるでしょうな」

サ「なんだけどさ、大規模に東京が開発されたオリンピックからもう50年でしょ。そろそろ1964年以前の建物は歴史的建造物に含めて、モノによっては保存対象にしたほうがいいと思うんだよね」

佐「例えば原宿のコープオリンピアとか? 気持ちはわかるけど戦後の建物は民間が造ったものがほとんどだし、実際問題インフラを中心に維持管理コストとかのこともあってそう簡単にはいかないでしょうね」

サ「でもさ、散歩してて東京の雰囲気を決定づけているのってその辺の建物って気がしない? 高度成長期の建物がさ、静かにちょっとずつ朽ちていってるというか、熱を失っていってるのがたまらないんだよね」

佐「気持ちはわかるけど、それは君が知ってる東京にすぎないんだ。都市ってのは「目的」じゃなくて、そこに暮らす人々の「手段」なのだから、時代とともに変わっていくのが当たり前だし、だからこそ魅力的なんだ。そりゃ確かに、「こんな素晴らしい建物をこわしちゃうの!?」って驚くこともあるよ。でもその建物だって、かつての何かを葬り去ってできたかつての最先端だったわけだし、そうやって新陳代謝することこそが街を死んだものにしないことだと思う。荷風が歩いた東京、JJ氏が歩いた東京、『ノルウェイの森』でワタナベたちが歩いた東京、全部違うものなんだよ」

サ「変わることを受け容れる、か……。それはすべてのことに言えるかもね。音楽だってそう、20年前に今のような音楽マーケットを誰が予想したか、ってことだよね。まぁ音楽の場合は、マーケットと音楽そのものの変化はまた別の話だけど。少なくとも新しいものに耳を傾ける姿勢だけは持っておきたいな」

佐「そういう意味では「今」がとても大事なんだ。また今度オリンピックやるじゃん、あれ既存の施設を使うって主旨がもはや曖昧になってきてて、またがっつり土建やるよ絶対。再び東京の街並みが大きく変貌することになるかもしれない。だから今の東京をしっかり目に焼き付けておくのは、それなりに意味があると思う」

サ「なんだよ、音楽の話に舵を切ったのにまた元に戻っちゃった。でもまぁ同じことだよね。変わり続ける世の中で変わらずにいいと思えるものを追い求めていくのって、時代と断絶してたら絶対にできない。「時代と寝る」って表現があって僕は比較的好きなんだけど、そういう部分をある程度自分の中に持ってることが、東京に生きる者の資格なのかもしれないな、なんて思うよ」

佐「夜、街を歩きながら?」

サ「そう、ビール片手にね」