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布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

ブラジルの若大将

佐藤「今日はね、ちょっと若大将の話をしようかと思って」

サトー「ゆうゆう散歩ね。関心、感動まではいいとして感謝ってそんな横柄な態度で感謝もクソもねぇだろうって……」

佐「違うよ、湘南の若大将じゃなくてブラジルの! おれはマルコス・ヴァーリの話がしたいの!」

サ「マルコス・ヴァーリ! ボサノヴァ~MPB*1の重要人物とされる大御所ながら、天真爛漫かつ天然な浮遊芸で、『マウントしない若大将』として誰からも愛される、あのマルコス・ヴァーリ!」

佐「わざとらしい解説ありがとう。百聞は一見に如かずだ、まずは若大将のジャケ写から見てもらおうか」

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佐「この辺は主に80年代のアルバムなんだけどさ、もうこれだけでマルコス・ヴァーリのことが好きになるよね」

サ「この設定から色彩感覚からもう……少なくともこの時期のマルコスは健康志向が強かったんだろうね」

佐「どれもツッコミ入れるとキリがないから一つだけ、チャリのやつのシベリアンハスキー、要る?」

サ「なぁ。ホントこの人、透き通るくらいの天然なんだろうね。こんな感じでネタにもなるんだけど、音楽は素晴らしいんだよね、ガチで」

佐「そうなのよ、ブラジルの音楽家でいったらそうだな、ジルベルト・ジルとかミルトン・ナシメントとか、あの辺より僕はマルコスが断然好き。何よりポップだから」

サ「そのポップさが炸裂してるのが初期のボサノヴァ時代かな。この曲からいってみよう」


Marcos Valle - The Answer (1968) - YouTube

佐「この曲はね、テレビとかカフェの有線なんかでもよくかかってるから、聴いたことある人多いんじゃないかな。とにかく洒落た小品って感じの」

サ「ボサノヴァの神様、ジョビンの作品ってどこかアカデミックでしょ、ヴィニシウス・ヂ・モライスの歌詞がついてたり。マルコスのはさ、歌詞も英語だったり覚えやすかったりで敷居の高さはないよね」

佐「かといって小西康陽言うところのエアーシャルダンみたいな音楽じゃなくて、BGMとして流すもよし、ヘッドホンしてがっつり聴き込むもよし、とにかく良く出来てる」

サ「これは奥さんとのデュエットなんだけど、このジャズの名門レーベル・ヴァーヴから出ているアルバム『サンバ’68』は捨て曲なしの名盤なんで、ぜひ聴いてもらいたいね」

佐「でさ。紹介したいアルバムとか曲はいっぱいあるんだけど、やっぱりマルコス・ヴァーリといえば、1973年の歴史的名盤『Previsao Do Tempo』の話をしないわけにはいかないでしょう」

サ「そうね。邦題はなくて日本ではそのまま『プレヴィザォン・ド・テンポ』って呼ばれてるんだけど、やれレアグルーヴだトロピカリスモだクラブDJ御用達だ、その辺の売り文句抜きにしてもさ、マジで名盤中の名盤だよな。それこそビーチボーイズ『ペットサウンズ』とかビートルズ『サージェントペパーズ』に比肩するくらいの」

佐「まずすべての曲の骨格がすごい。この人、たぶん作曲家としてならバート・バカラックの牙城に迫るくらいの才能はあるよね。なんだけど基本ド天然だからさ、わけのわからん浮遊感に包まれてるんだよね、全体的に」

サ「聴いてすぐに『名盤だこれは!』って感じはしなくて、『なんか不思議な音楽だなぁ』って感じなんだけど、聴けば聴くほど名曲揃いってことが思い知らされる。まずはアルバム1曲目、『死ぬまでフラメンゴ』いってみようか」


Marcos Valle - Flamengo até Morrer - YouTube

佐「曲の前にこのジャケね。水中に漂うボクを撮って!っていう発想がもう常人じゃないよね。そんで曲はものすごくよくできたポップソングなんだけど、終始『できるかな』のゴン太くんみたいな音がかぶせられてて」

サ「豆知識だけどあれはクイーカっていう楽器で、サンバなんかでよく使われてる。そんでこのメロディ、なんかじわじわくるよね。曲の最後、シェイカーを口で言う的なスキャット(?)もたまらん」

佐「熱は高くないんだけど、明らかにおかしい何かが仕込まれているよね。そんで次は必殺アッパーチューンいってみようか」

サ「出た、ヘ・ヘ・ヘだ!」


Marcos Valle - Os Ossos Do Barão - 1973 - YouTube

佐「最高だよな。僕はポルトガル語わかんないけど、絶対これヘンな言葉ばっかりチョイスしてるでしょ、語感重視で。ヘヘヘヘってどう考えてもコーラスに使わないよね、普通」

サ「ぶっ飛んでるよね。それにしてもコンパクトでめっちゃよくできた曲ですな。かっこいいんだけどマッチョなところが全然なくてさ、聴いてるだけで顔がゆるんでくるじゃない。天然っていうより、育ちがいいんだと思うよこの人」

佐「そう、攻撃的な部分が一切ないのよマルコス・ヴァーリの音楽には。『俺天才、どうよ!?』って圧もないし、ただただ天真爛漫さが炸裂してるよね」

サ「これほどの高い作家性を保持していながら、こんなに自意識が希薄な作品ってないよね。まぁそれは彼の作品全般に言えることで、なかなかこういうパーソナリティっていないよな」

佐「じゃあ最後にしっとりめの曲を。バラードみたいなメロディ書かせてもやっぱりすごいんだ若大将」


Marcos Valle - De Repente, Moça Flor - YouTube

サ「なんかもうさ、ガーシュインあたりが作ったスタンダードナンバーかと思うくらいのメロディだよね。とてもこのジャケの盤に入っているべき曲じゃない!」

佐「ホントそうだよ、絶対ネタだって思ったら人類の至宝みたいな曲が玉手箱のように。突き抜けた天才って笑えてくるんだってのがよくわかる」

サ「マルコス・ヴァーリはね、たぶんマイルス・デイヴィスとかフランク・ザッパとか、音楽性は全然違うんだけど、あの辺の系譜に連なる才能だと思うんだ、もうその人が一つのジャンルみたいな。でもマイルスもザッパも音楽家としてすごいのはよくわかるんだけど、どう考えても友達になりたいタイプじゃないよね」

佐「そう、そこなんだよ、マルコス・ヴァーリは近くにいたら絶対友達になりたいもんね。絶対面白いよね、この人」

サ「まぁ考えてみたら我らが湘南の若大将もちょっと天然入ってるよな。巨人の原監督もたいがいだし。『若大将』の異名がつく人って、やっぱりそうなんだよ」

佐「ま、マルコス・ヴァーリを若大将呼ばわりしてるのって、日本人だけだけどな」

*1:Música Popular Brasileira、ブラジルのポピュラーミュージックってこと