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布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

「超LIFE」の話

サトー「♪とおーりあめがっコンクリートをそーめていくのさっ」

佐藤「なんだなんだ、朝からずいぶんご機嫌じゃないか……さては『超LIFE』観たんだな!」

サ「あ、君も観た? いやもうなんていうか……涙出てきちゃったよね」

佐「うん、別に泣かせるような作品じゃ全然なかったけど、なんかね。ああ、人ってこんなに輝くことができるんだ、という」

サ「いや冷静になって考えたらさ、オザケンって隠遁しちゃったイメージ強いけど、LIFE期の後も結構仕事はしているわけ。オザケンよりインターバル空いてる人とか新曲出さない人ってごまんといるのにさ」

佐「そうなんだよね、実はかなり活動している。でもね、やっぱりLIFE期のあの才能爆発な感じと比べるとね、どうしても。しかしさ、あの頃のオザケンって25、6でしょ? すごいよね、もうビートルズ並に濃厚な青年期」

サ「ホント信じられないよ。でも本人にしてみれば、誰よりも深く過去の表現作品に触れてきて、掘り下げてきて、分析もしてきただろうから、あの若さであれだけの作品を作ることができたのも必然なんだろうけど」

佐「しかもオザケンは音楽に限らないじゃん。文学とか思想まで相当に渉猟しているわけで、凡百のミュージシャンが一生かかっても成し遂げられないような仕事をたった数年で達成してしまった」

サ「ねぇ、フリッパーズだけでもすごかったのに、そこから数年で『犬』を出して『LIFE』でしょう。もうその後何にもしなくてもさ、量質ともに十分以上の仕事をしちゃってたんだよね」

佐「そんで『超LIFE』はさ、基本的にアルバムの曲を当時の関係者のインタビューを交えながら、当時のMVとともに流すというわりとオーソドックスな作品なわけだけど、改めてどう感じた?」

サ「オザケンのすごさというのはもう語りつくせないしこれからも折に触れて語っていくだろうからいったん置いといてね、あの頃オザケン周辺にあった磁場がもうすごかったんだと思った。それこそスチャダラパーとかさ、ビジュアル面のタケイグッドマンとかさ、もうみんなそこにいた人たちが人生のうちでいい時代を迎えていてそれがシンクロしていたんだろうね」

佐「ホントそれだよな。とくにタケイグッドマンの仕事とオザケンの音楽が相互に影響しあっていたというのはあると思う。これが20年も前の作品と言われても信じられないくらいに色褪せてない、どころか今でも新しい」

サ「ライブのシーンなんかでもそうだね。ステージを映している間はさ、演ってる音楽も演者の感じも全然新しいんだけど、客席を映したとたんに時代がばれるよね」

佐「それって別に客がダサいってことではなくて、客は時代相応なんだよ、いかにオザケンたちがそこを超越してたかって話だね」

サ「やっぱり20年ってのはさ、決して短くない時間ですよ。その時の風雪にまったくびくともしないどころか、今もって新鮮なオザケンの音楽、というか一連の表現って何なんだろうね、改めて」

佐「うん、おれはね、やっぱり恐ろしくまっとうなものだと感じた。今まで人間は何をどんなふうに表現してきたんだろうという蓄積の上に、徹底的に練り上げられた音と言葉を構築するという、ミュージシャンとしての王道の仕事っぷり。そんでそれを夢中になってやるもんだから、表現者当人が神秘的な領域に入っちゃってるというあの倒錯があるよね」

サ「音楽って特にさ、やり込めばやり込むほど作者の管轄下を離れていくんだよね。そのゾーンってたとえばパンク的な初期衝動だけでも簡単に入れるし、そこにもそれなりの普遍性はあるんだけど、オザケンのは決定的に違う。膨大なアーカイブを背景に練り上げられた超緻密な設計図を手にしながら、最終的には『設計図なんて知りませーん』みたいな領域に入ってるじゃない」

佐「ツアーでさ、『ラブリー』をお披露目したときの映像が収録されてるじゃない。あれなんてすごく生々しいよね。オザケンが本番直前まで歌詞を書いているというエピソードの後に流れるんだけど、実際そのステージでのオザケンは、ところどころ譜面を見ながら歌詞も間違えたりしてて、本当に出来立てほやほやの『ラブリー』なんだけどさ、手探りで始めた曲がステージ上でどんどん名曲に仕上がっていく様子がわかるんだもん」

サ「あれはすごいよ。観てるお客さんもさ、今目の前で始まった曲が時代を超越したマスターピースになっていく瞬間を目の当たりにしてるわけでしょ? それを神秘的体験と言わずして何と言おうか!」

佐「それと『超LIFE』で堪能できる若き日のオザケンの姿、これも素晴らしいね。なんていうんだろう、もうかわいいとかカッコいいを通り越して神々しいというか、ホント妖精そのものだよな」

サ「それこそ『超人間』というか、そんな存在感。そんで颯爽としたシティボーイでさ、言わずもがなの童顔なんだけど妙に色気があってね。もう華奢で長い指でギターを弾く姿が色っぽいのよ」

佐「とにかく生き物としての輝きが尋常じゃない。メジャーフィールドでさ、完全に自分の作った表現でもってあれほどまでに輝いた人って、やっぱりどう考えてもオザケンしかいないよね」

サ「もちろんオザケン後も優れたミュージシャンはいっぱい出てきたし今もたくさんいるけど、彼だけはちょっと不可侵の領域にいるというか、実際彼の部分的な真似っ子は出てきたけど、本格的なフォロワーって出てこなかったよね」

佐「あれは真似できないって! 仮にだよ、例えばオザケン風の曲を作る人が現れたとしても、オザケンってとにかく総合的な存在だからさ、足下にも及ばないよね」

サ「そう、その総合的な感じが見事にパッケージされているのが『超LIFE』。とにかくあんな人は後にも先にもオザケンしかいないってことが嫌というほどわかる作品だよね」

佐「カリスマとか神格化される存在じゃないけど、オザケンってのはやっぱり誰も到達できない領域に行った人。そして『LIFE』はさ、人生の喜びとか悲しみとか、生きてて『うわぁ!』ってなる瞬間を見事にパッケージした作品。結局我々はこの20年間、あの人の後を追いかけて生きてきたような気がするな」

サ「『LIFE』を聴いちゃった人はたいがいがそうだと思うよ。でもそれはすごく幸せなことだと思わない?」

佐「そうだね、そう思う。昔はよかったとかそういうんじゃなくてさ、『LIFE』が連れて行ってくれる場所ってすごく大切だよね、今も、これからも」