布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

空が灰色だから

手をつなごう。

 

 

 

こんばんは。吹雪です。

私は富山県出身で、冬はいつも深い灰色の空を眺めて過ごしてきました。標高の高い立山に、日本海から水を吸った空気が衝突し、雪になって、くもり空が続くのです。

太陽の光を浴びないと、どうも人間は憂鬱になるらしい。それでも私は、大きな雪の降る、灰色の空が嫌いじゃなかった。それどころか、降る雪はこの世界で最も好きです。その話はまたいつか。

 

私の好きなコミックに、「空が灰色だから」という作品があります。

そして、その中に、「空が灰色だから手をつなごう」という話があります。ありがちかもしれないけど、私はとても好き。

この作品はさまざまなショートストーリーを集めていて、バッドエンドが当たり前のようにあります。そのため、安心して読めないからこそ、見慣れたハッピーエンドが心を打つようになっています。

 

空が灰色だから手をつなごう」は、こんな話。

 

シングルマザーが子供を育てる話で、子どものみのりが、母親と遊んでシロツメクサで冠を作り、母親にあげるところから始まります。

仲良く見える親子だけれど、他の子がニンテンドーDSで遊んでいるのに遭遇し、みのりの複雑な心境が描写されます。みんなが当たり前のように持っているイマドキのおもちゃ、それにお父さんを、なぜ私は持っていないの、とぽつりと言うのです。

母親は思います。友達は背が高いのに、みのりは痩せて体が小さい。みのりを幸せにすると誓ったのに、母親らしいことが出来ていないのではないか。世間ではあたりまえにあげられるものを、あげられていないのではないか。

母親はいたたまれず、ニンテンドーDSを買いに走りますが、お金が足りません。数万円もの高価なおもちゃです。代わりに、セールになっていたシルバニアファミリーのようなおもちゃを買いますが、お店の人に、いまどき幼稚園の子でも喜ばないから売れて良かったという陰口を言われます。母親は、私が子ども時代に欲しいと思っていたこのおもちゃを、いまの子どもは欲しがらない、私は子どもの心をわかっていないのではないか、母親失格ではないのか。残念そうな顔を見ることになるのではないか。そう思います。

みのりは、プレゼントのおもちゃを手に取った、いかようにも解釈できる表情の後(バッドエンドの多い作品ですから読者は緊張します)、嘘と屈託のない、ありがとう、という気持ちのこもった笑顔を母親に向けます。

そして、花瓶にかけてあるシロツメクサの冠を描写して終わります。

この話はそれだけの話です。しかし、あらためて冒頭の描写を見ると、言葉にできない感動を覚えるひとは少なくないはずです。

 

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私の家は裕福ではなかったこともあり、姉のお下がりばかりだとわんわん泣いたときがありました。夕飯をつくっている最中だったのに、母に連れられてクレヨンとクーピーペンシルを買ってもらい、本当に大切に使いました。

滅多に泣かなかった私を前にした、母のあの優しいまなざしを忘れることはできません。

私が言葉にして取り出したいものは、お金やものを越えて示されるかけがえのない愛情なのかといわれると、そうではないと思います。私は、この世界が、愛に満ちていることや、愛に満ちることなんてこれっぽちも期待していないし、美しくもないと思います。嫌な人はいるし、いやな思いもする。

 

でも。

 

とても貴い、優しさのみなもとを私は確かに受け取り、そして、確かにこの世界に優しい人がいるから、私は、あの憂鬱に見える灰色の空を前にして、「空が灰色だから」、という言葉の後に、「手をはなそう」ではなく、「手をつなごう」、と言いたくなるのです。

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おやすみなさい。内輪向けのブログでした。

(ちなみにバンドは非常に良好です)