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布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

とんかつと「関東文化系少女」の話

おはようございます、まくらことばってバンドやってますサトーです。
今朝家を出ようと靴ひもを結んでいると、涼しいなかにじわっとくる湿気と熱を感じ取り、今日は暑くなるだろうなぁ、10月なのにと思いました。
案の定夜が明けきった街は、ちょっと動くと長袖をまくりたくなるような空気に包まれています。
冬が好きな私は、いつまでも居座るこの暑さにうんざりしながらも、日に日に勢いをなくしていく様に物哀しさを感じ、「ああ、いっちゃうんだ」的な気持ちにもなったりしています。

さて、知ってる方も知らない方も、ほんっとにどうでもいい情報なんですが、私サトーは肉が食べられません。
これは信仰ですとか菜食主義ですとかそういった高尚な理由ではまったくなく、単に好き嫌いの問題です。
なんで肉が食えないまでに嫌いになったかと言いますと、たぶん小学校の給食で粗悪な肉に当たる機会が多く、脂身の塊や筋ばっかりの低品質ミートを、「給食は絶対に残すな」というガッコーの教育方針に基づき、休憩時間に突入してもなお泣きながら食べていたような記憶に由来するのかもしれません。
また私の実家は魚屋だったため魚に関しては貴族的な環境にあり、それこそ冷奴感覚でフグ刺しとか食っていたこともあって、タンパク源としてなんでわざわざ不味い肉を食べにゃならんの、という事情もあったかもしれません。
とにかくきっかけはきっかけとして、もう肉の味そのものが嫌いだし、栄養源としても野菜と違っていくらでも代えがきくわけで、どうしても食べなきゃいけない場合を除いて、自分から肉を口にすることはまずなくなったのです。

と、ここまで書いてきて大いなる矛盾なんですが、私、最後の晩餐に指定しても後悔しないくらい、とんかつは大好物で(ただしひれかつ限定)。
ま、毎日食べれるほど好きではありませんが、月に1回くらいは無性に食べたくなってとんかつ屋に馳せ参じておるわけであります。
ちなみに鶏肉も、ササミとか皮を完全除去したムネはOK。牛肉は赤身でもダメ。

ということでたまに出掛けるとんかつ屋、私はあるとき、なぜか埼玉は春日部のロビンソン百貨店の7階にある和光(だったと思う)で、ひれかつ定食を食べていました。
すると隣の席に、大学生くらいの女の子2人組がやってきまして。
その子たちは今様の感じというよりも、90年代によくいたようなサブカル好きっぽい感じで、私もちょっとこれは気になる存在だなと、お替りのキャベツを頼んだりしながらちらちらと動向をうかがっていたわけです。
そしたらその2人、どうやら古本屋に行ってきたようで、その日の収穫を取り出して「これ面白そうだよね」とか静かに盛り上がってるんですね。
私は「お、いいぞ」とか思いながら見ていたわけですが、その本が村上春樹『ダンス、ダンス、ダンス』の文庫本だったりするもんだから、「おお、ますますいいぞ!」とガン見してしまいました。
彼女らは小鳥がさえずるように、この前読んだ春樹本の感想などを言い合い、これから読書に取り掛かる1冊を前に、これから饗されるとんかつへの期待感も相まって静かに高揚していたのでした。

それを見た私も、なんか「ああ、いいなぁ」と。
そして窓の外に目をやれば、マンションと住宅が霞みの向こうまで延々と続くような関東平野の風景が広がっているわけです。
それはもう、本当に退屈を画に描いたような風景で、全ての変化をあらかじめ拒絶したような静かさのうちに、少しずつ朽ちていく何かを蔵しているような景色です。

この2人の女の子は、この退屈な街でどんな日々を過ごしているんだろう。
電車に1時間ちょっと乗れば渋谷でも原宿でも行けるだろうに、この子たちはなぜこの冬晴れの日曜午後、こんなところで本の話をしているんだろう。
私は自分の疑問に答えるすべもありませんが、彼女たちの存在そのものに、ちょっと感動というか、「ああ、なんかいいなぁ」と思ったのでした。

……「関東文化系少女」という曲は、私があのとんかつ屋で見かけた女の子の気持ちになって作ってみた曲です。
これまで「自分の気持ちを歌う」という方法でばかり曲を作ってきましたが、「誰かの気持ちになって歌う」という方法を初めて取り入れたという点で、私にとってはちょっとしたターニングポイント的な曲でもあります。
私はあの2人の女の子になって1番の歌詞を書きあげたあと、2番は別の少女に憑依してみようと思いました。
誰かモデルになるような人はいたかしら……それこそ房総半島の真ん中あたり、「海も山も途切れた街」で東京のことを思いながら少女時代を過ごしたような……、あ、そういう人、ひとり知ってる。
ということでごめんなさい、2番の歌詞も1番同様、勝手に憑依して作らせていただきました。

……われわれまくらことばは、すべての関東文化系少女(“元”含む)のためのバンドです。