布団あります まくらことば活動日記

歌ものロック/ポップスバンド、まくらことばのブログです。

「季節のはじまり」のはじまり

おはようございます、今朝は雨の10月スタートとなりました。

日曜の午後くらいから少しずつ空気に湿気が増えてきて、「あ、これは降るな」という予感が募ってきてのこの秋雨。

からっとした空気の秋晴れが恋しいですが、こんなことを繰り返しながら秋が本格的に始まるのだろうと思う、晩秋生まれのサトー@まくらことばです。

 

さて、当たり前の話なんですが、まくらことばの曲を世界で最も聴いているのは誰あろう私に間違いなく、レコーディング段階も含めれば大げさじゃなくそれぞれの曲を500回以上は聴きこんでいると思います。

そんなまくらことばヘヴィリスナーの私が聴けば聴くほど「いいなぁ」と思うようになってきた曲が、標題にあります「季節のはじまり」なんですね。

今日から10月ということもあり、ちょっとこの曲についてお話ししてみようかと思います。

 

「季節のはじまり」は実は昔作った曲の一つなんですが、若かりし頃のバンド時代ではなく、20代半ばで宅録のようなことをしていた頃に作った曲です。

当時、私に音楽仲間はおらず、まぁ自分からそのような状況に突入していったのは間違いないのですが、1人で曲作りとレコーディングをちまちまとやっては、何のあても展望もない日々を過ごしていました。

もうね、楽しくないんですよ。

曲ができてアレンジもできて、そいつを多重録音して完成しても、ただそれだけ。

良いも悪いも言ってくれる人もおらず、ひたすら自分で聴いて「あーあ」とかため息をつくしかなかったことを思い出します。

その時代には他にも数曲作成したのですが、まくらことばを始めるにあたって、まぁぶっちゃけ曲の頭数を揃えるために、当時の作曲ノートを引っ張り出してきて再演してみたのがこの曲です。

 

「季節のはじまり」はかなり前向きな歌詞がつけられた曲ですが、当時の自分の状況を考えると、あれは明らかに虚勢を張っていたと思います。

「季節のはじまり」どころか、日々薄れゆく音楽への熱情を眺めながら、反比例して増えていく将来への不安を増幅させるような、まさに「季節のおわり」にさしかかっていた時代です。

そんなときに「少しずつ溶ける氷みたいな季節のはじまり」だの、「本当にはじまった本当の話」だの、「おまえ、ウソつけ!」というしかないんですね。

でもこの曲、メロディと構成はちょっと光るものがあると思ったので、「歌詞は全然リアリティないけど、ま、一応入れとくか」みたいなノリでまくらレパートリーに加えてみたのでした。

 

その後、吹雪様と二人でスタジオ入りするようになったときは、レパートリーも5曲くらいしかなかったこともあり、「まぁあんまりいい曲じゃないから、最終的にはやらないかもしれないけど」などと言いながら「季節のはじまり」を練習し始めました。

すると吹雪様が意外にも、「『季節のはじまり』はいい曲ですよ、僕好きですよ」と言いはじめたんですね。

私は「へぇ、そんなもんかい」とまだ懐疑的で、「だったらあの歌詞を変えて演ることにするか」と歌詞の改変に着手しました。

そしたらね、できないんですよ。

もう1行、いやワンフレーズたりとて出てこない。

あの虚勢だらけの出来の悪い(と思っている)歌詞がメロディーにへばりついてて離れず、代わりに当てはめる言葉が何ひとつ浮かんでこないんです。

その時、やっと吹雪様の言っていたことがわかった気がしたんです。

確かにこれは嘘っぱちの歌詞かもしれないけど、それは書いた時の事情を知っている自分だからそういう先入観で捉えてしまうわけで、これはこれでリアルな歌詞なんだ、と。

ある季節が終わろうとしているのに抗って「季節のはじまり」なんて言ってしまう気分が、その時の「本当のこと」だったんだなと、ここで初めて気づきました。

そしたらなんか、この曲が急に輝きはじめて。

今では歌詞も含め、まくらことばの曲の中でも、相当にお気に入りのナンバーとなっています。

そしてこの曲の魅力を吹雪様に教えてもらったことで、改めて、バンドっていいなと。

あの宅録時代の孤独が、ここにきてやっと救われたような気持になりました。

 

「季節のはじまり」で気に入ってるのは歌詞だけじゃありません。

冒頭とサビアタマの「じゃーん」という響き、あれがたまらなく好きなんです。

あれはCadd9というコードなんですが、私は昔からこのコードの響き――明るくも暗くもない中立な印象でありながら、何かを予感させるざわめきを含んだこの感じがたまらなく好きで、この響きを活かすような曲が作りたいとずっと思っていました。

そういう意味で、「季節のはじまり」はなかなかよくできてるというか、あのどアタマの「じゃーん」のイメージが曲全体を貫いているような気がするのは私だけでしょうか。

 

そういえば今日10月1日は、私が音楽の世界の入口に立っていたとき、この世界の水先案内人となってくれた人の誕生日でした。

私のメンターであり、ゆさくんの先輩でもある青木大成さんのお誕生日を祝うとともに、まくらことばの活動を頑張ることで、恩返しできればと思います。